やみクロ - レスポール・デラックス (前編)

やみクロ(やみくもクローズアップ)の第3弾は、良質なマホガニーネックとタイトなパンケーキボディが人気のレスポール・デラックス。シンプルながらも工夫されたミニハム固定用のベースプレートと、個体差の大きいアルミテールピースを見ていきます。

Les Paul Deluxeに「やみくもクローズアップ」

レスポール・デラックス - ヴィンテージの息吹を残す70年代ギター」でご紹介したレスポール・デラックスは、良質なマホガニーネックとタイトなパンケーキボディが織りなす、全音域をカバーしたサスティーンが人気のヴィンテージギターです。

軽量なクルーソン・ペグとアルミテールピース、スリムなABR-1のコンビネーションは、見事に50年代のDNAを引き継いでおり、オーナーを魅了してきました。

隠れた名器「ミニハムバッカー」

コンパクトなミニハムバッカーとマーシャルアンプのマッチングは最高で、ファットでブーミーなウーマントーンを繰り出すことから、岩撫安彦氏をもって「最高のピックアップのひとつ」と言わしめた、スタンダードとは一線を画す隠れた名器でもあります。

そんなミニハムバッカーですが、ピックアップリングの四隅を見ると、ファイヤーバード用PUリングのようなスクリューがありません。どのようにギターのボディに取り付けられているのか、案外見たことがない部分です。

ピックアップをボディから外すとまず目に入るのは、長く伸びたエレベーションスクリューです。これ以外にはピックアップリングにはスクリューがありません。

それでも、ちゃんとピックアップをボディに留めて、かつ高さ調整も可能にする機構は、シンプルでありながら工夫に満ちています。

高さ調整の幅が随分ありますね。

この工夫が、ベースプレートです。

工夫に満ちたベースプレート

普通の長方形のバーに、穴がいくつか開いているだけのシンプルなプレートですが、これがミニハムをボディに固定しながら高さ調整も可能にするアイデアなのです。

このプレートには、新旧織り交ぜると5種類あるのですが、ここではヴィンテージの部類に入る3タイプをご紹介します。

上の画像の一番左は50年代のP-90用で、真ん中のネジ穴がありません。他の4枚は60年代後半から使われるデラックス用のプレートで、真ん中にネジ穴があります。下の画像の左右でくらべてみてください。

もうひとつ、こちらはアルミ削り出しの素材で厚みがあるタイプです。

これはミニハム専用のプレートで、P-90には流用できません。穴を2つ開けるだけで共用パーツになるのですから、手間を惜しまずに加工しておけばいいのに…と、ついつい製造業に従事したものとしてのアフターパーツ管理への心配が頭をよぎります(笑)

プレートの留めビスは、ギブソンらしからぬ「ホームセンターで買えそう」な武骨なネジです。その割に、なくすと代替が見つけにくい厄介なシロモノ。

ピックアップのエレベーションスクリューには、フルサイズハムバッカーと異なりスプリングが搭載されていません。このあたりは、エスカッションからぶら下げられてスプリングのリバーブ振動の干渉を受けやすい従来の構造よりも、感覚的にタイトに思えますね。生産工程の手間も省けて一石二鳥でしょう。

個体差のあるアルミテールピース

そして70年代初期レスポールの特長でもあるアルミテールピースです。50年代とは異なる金型で成型されていますので、裏側のマーキングで簡単に区別できます。

ただ、この時期のアルミテールピースには仕上げや質量の個体差があって、例えば軽いモノは23gから、重いモノは30g以上と、まちまちです。

裏側の仕上げですが、この2本を比較すると、左はアンカーにかかるフック部分の裏側のグラインダー仕上げがありません。生産数量の割には仕様が安定していない印象を受けますね。パーツの替わっているオーナーは、どの仕様に戻すのか難儀です。

後編では、ABR-1ブリッジを中心に、さらにレスポール・デラックスにクローズアップします。

 次に読むなら

やみクロ・ゴールドトップ - 結構知らなかった事(前編)
やみクロ(やみくもクローズアップ)の第2弾はレスポール・ゴールドトップ。前回のES-335に続き、ヴィンテージの個体の細部をじっくりと観察します。

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