やみクロ・ゴールドトップ - 結構知らなかった事(前編)

やみクロ(やみくもクローズアップ)の第2弾はレスポール・ゴールドトップ。前回のES-335に続き、ヴィンテージの個体の細部をじっくりと観察します。

やみクロ(やみくもクローズアップ)ゴールドトップ編

土曜日の午後、Vintage Maniacsで毎年作っているギターカレンダー用の写真撮影をしました。スプリットローラーやレスポール・ゴールドトップ、SGカスタムなどを新たにロケしたのですが、その時に、ゴールドトップの細部をじっくり眺める機会がありました。

「素材と原因の特性」によって作り出される天然の文様

まずはボディトップです。そういえば、ヴィンテージギターの塗装クラックを凝視することって、あまり無いですよね。ギブソンがエイジドバージョンを発売してからは、新しいギターに「どのようなスパイダーウェブやカッタークラックを施すか」、エイジド処理がいろんな方面から研究されてきました。自然な経年でラッカーが伸縮し割れてくる状態は、こんな感じです。

割れた部分から空気中の湿度がゴールドフレークまで到達し、すこしサビの発生(緑がかった変色)が見られます。

この個体は、トップの塗装が剥げ落ちた部分から、メイプルのトラ目が見えています。

塗装が剥げる原因となった打痕がボディサイドに残っていて、その部分もラッカーがクラックしています。

天然の文様が「素材と原因の特性」によって作り出される関係性が、よくわかる写真ですね。

シルクスクリーン印刷のメッシュ

学生時代、手に入れたばかりのレスポールを眺めながら、「新しい発見だ!」と興奮したのは、ヘッドストックに施された「Les Paul」ロゴのシルクスクリーン印刷です。

しっかりとメッシュの跡がうかがえます。

高校の美術部にあるシルクスクリーン印刷の道具で、あれやこれやと再現を試みたのが昨日の事のようです。

せっかくのVintage Maniacsなので、いずれはこの質感を再現できる「孔版」を企画したいと思っています(笑)

手作業の工業製品らしさと粗削りな辻褄合わせ

ES-335(1960年製)のやみクロでも、細部に「手作業の工業製品」らしい作業工程の爪痕がみられましたが、その5年前ともなると、さらに「粗削りな辻褄合わせ」が随所に散見され、ほほえましいです。

ネックバインディングの厚さ・処理がぎこちなくて美しい。

このあたりは、もうちょっと「ちゃんとしようよ」的な…。

ヘッドロゴは、おさらいになりますが、この時期はオープンオーの「内側の線」などが特徴的なのでガイドラインを入れてみました。

意外にも平行が無いですね。

ヘッド端の「当て傷」部分から、柊(ひいらぎ)のつき板が覗いています。ここにも綺麗なスパイダーウェブが出ていました。

ヘッドのサイド、ペグと接する部分は、ストリングワインダーで「雑にグリグリ弦を張る」と、丸い円を描いたような傷が沢山ついてしまいます。この個体は…というか、筆者は弦を張るとき、かならず手巻き(笑)なので、道具による傷はあまりつけません。そのかわり弦の張り替えをさぼっていますから一長一短ですね。

ナット付近のクラックが描く曲線、なんとも言えないキュートさがあります。

長さの違う2種類のストラップピン

これまであまりご紹介する機会がなかったのですが、レスポールのストラップピンに使われているスクリューを見てください。

このギターはネック側とボディ側、それぞれ同じスクリューで止められています。溝は13本です。同年代でもSGなどに使われているものと長さが違います。

全長が「長いモノ」と「短いモノ」のセットです。溝が13本と12本で1本しか違いませんが、ねじ切りされていない部分の長さが異なります。このストラップピン用ネジのデッドストックは、144本単位で茶色の紙箱に保管されていました。

レスポールのアングルで個人的に一番気になるのがカッタウェイの内側で、妙にエロチックです。なんとなく、ティーンエイジ・アイドルのツルツルの脇の下をそっと「見て見ぬふりをする」ような、密かな楽しみが宿っている気がします。って言ったのは私ではなく、Aで始まるBIGなアメリカン・ロックバンドのB.W.さんです。私はデビュー当時のNENAの方が好きなので…。

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Gibson ES-335 やみくもクローズアップ(やみくろ)
「やみくろ」では普段あまり見ない画像をたくさん掲載し、ギターとパーツの関係を解き明かします。今回はヴィンテージのES-335のパーツを取り外し、ミクロのディテールに潜むヴィンテージ感を探っていきましょう。

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