音の本棚 第6回 『Little Guitars』 前編

今回の「オンダナ(音の本棚)」は、ソリッドボディのジュニアやスペシャルを中心に編集された『Little Guitars』。手が届くヴィンテージとして根強い人気のバイプレイヤーたちを見てきましょう。

この20年間で刊行されたギター関連雑誌で、筆者が最も「完成度とマニアック度のバランスがとれた愛すべき写真集」と感じるのが、今回紹介する『Little Guitars』です。レスポール・スタンダードやストラトキャスターというメインストリームを主演男優とするならば、ここに紹介されているバイプレイヤーたちは、まさにアカデミー助演女優賞とも呼べる立ち位置で、ギタリストを志す少年少女の夢を支えてきた「Little」な存在でしょう。

普段ステージやスタジオでは、なかなか見ることが少なくなった「Melody Maker」や「SG Jr」、「Musicmaster」や「Coronet」。中でも、上位機種にひけをとらない贅沢な木材を使用したギブソンやエピフォンのラインナップは、今なおタイトなグルーヴ感をもちあわせ、そのまま使っても良し、チューンナップしても手頃と、手が届くヴィンテージギターとして、根強い人気を保っています。

この写真集は、ソリッドボディのジュニアやスペシャルを中心に編集されています。『Little Guitar』の定義が「入門機」なのか「スチューデントモデル」なのか、「安価なラインナップ」なのか。それぞれのギタリストがギターに求める内容によって、その価値が随分変わってくると思います。

たとえば、Les Paul JrやSpecialを見てみると、70年代から80年代にかけては、ローリングストーンズのツアーやギャリー・モー(ゲイリー・ムーア)、マウンテンのレスリー・ウエストなど、ライブやツアーでガンガン使える実用機でした。

このページを見て、ふと思うのは「なぜ、メロディーメーカーは、1PUをJr、2PUをStandard、3PUをCustom」と呼ばなかったのだろうか…ということです。MMがSGシェイプに移行した60年代中期には、SGがJr、Standard、Customの3モデル、LPがJr、Special、Standard、Customの4モデル、FirebirdがⅠ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅶの4モデルと、明確にモデル名が分かれています。なのにメロディメーカーは、1PUとか2PU(Double)とか3PU(Ⅲ)というスペックで読んでいるだけでした。

本来は、店頭で商品説明するときにも、他のギブソンのモデルと共通した呼び方のほうが混乱しなくていいはずですね。あるいは、初めてエレキギターを買う高校生への説明は、グレード名よりも「これは、マイクが1つのワンピックアップだよ。3つ付いているのがよければ、MM 3PUだ」という具合だったのでしょうか。

とはいえ、このメロディメーカーのラインナップたるや、主役のSGやLPよりも多彩なうえ、なんとか「上位機種との価格差を正当化しよう」とする試みがなされており、商品企画部門の努力というか、苦心がうかがえるわけです。

Cherry カメムシ 2PU with Short Vibrola

Melody Makerは、なんと16通りのバリエーションがあります。

SB ダルマ Cherry カメムシ SB カメムシ
Single Cut Double Cut
1PU
1PU with Short Vibrola
2PU
2PU with Short Vibrola

SG Melody Makerになると3PUが加わるのでバリエーションが増えるかと思いきや、ボディシェイプが統一されるので半分の6通りに縮小されます。

SGMM
1PU
1PU with Short Vibrola
2PU
2PU with Short Vibrola
3PU
3PU with Sort Vibrola

このあたりは依然としてコレクター泣かせです。Melody Makerだけで16本、SGMMはカラーが「ペルハムブルー、レッド、ウォルナット」と3種類あり18本(6×3)、そしてこれにラージヘッドが加わると…これだけで50本近くをコレクションしないとコンプリートになりません。

その観点からも、『Little Guitars』は個体の撮影に根性が入ってますね。その上、Leftyまで加えようとすると…。さらに、Epiphoneが同価格帯でハイクオリティなLittle Guitarsを出しているので、守備範囲を広げすぎると、40年かけてもなかなか完全制覇できません。

冒頭で、「MMはチューンナップのベースとしてもポテンシャルが高い」というお話をしましたが、確かにエボニーブロックを搭載してみたり…

ちょっとeBayを覗くと、フルサイズ・ハムバッカー搭載などの改造品にお目にかかれますね。

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メロディーメーカー - 入手しやすい最後のヴィンテージ・ギブソン
50年代の丁寧なモノづくりを色濃く反映しているメロディーメーカーは、ちょっとした調整やピックアップのグレードアップで、まだまだ現役のすばらしいモデルだと思います。指板の贅沢なハカランダをとってみても、入手しやすい最後のヴィンテージ・ギブソンかもしれませんね。

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