漆黒の美しさ - 7610 Roc JetとLes Paul Custom (中編)

Gretsch 7610 Roc JetとGibson Les Paul Custom、2本の黒いギターに注目したシリーズの第2回。前回のRoc Jetに続いて、今回はLes Paul Customをご紹介。70年代レスポールの典型的なスペックとなる部分をクローズアップでご覧いただきます。

「漆黒の美しさ」と題していますが、Vintage Maniacs読者のみなさんはすでにご存じの通り、レスポール・カスタムのブラックは、「クロ」というよりも「ディープダークグリーン」とでも表現しましょうか、いわゆる「深緑(ふかみどり)であって、ブラックではない」ですね。

【やみクロ】グリーンな日曜日 - 68年のレスポール・カスタム

【やみクロ】グリーンな日曜日 - 68年のレスポール・カスタム

2022.11.18

めずらしい70年代のLefty Customです。ヘッドストックに、歴戦の騎士たる残像がしっかりと表れています。

ところで、ヴィンテージギターを観察するときに、不必要なパーツ交換があると、すごく気になりませんか? たとえば、このギターのように、ロッドカバーひとつとっても、後年のパーツに置き換えられているのをみると、「なぜ交換したのか?」と思うわけです。そして、「↓」このあたりの塗装クラックをじっくり観察すると、まあ、普通は経年だけではこうした割れ方・剥がれ方はしないので、「折ったかな?」と直感的に思いますよね。

で、ネック裏をチェックします。

「あ……、塗装の色が違う……」

「グリーン・ブラック」の塗装・色合わせは凄く難しいので、太陽光下でも容易に区別できます。

修理跡を発見しました。割れた部分に接ぎ木して補強してある、丁寧な作業です。

今回はせっかくなので、この部分の塗装をブラックライト対応にリペイントしてもらうことにします。そのほかに、セットアップ時に一緒に作業してもらう箇所がないかチェックします。

ペグはもともとKLUSONだったのを、Groverに交換してあります。同年代には工場出荷時からGrover 102Gを搭載した個体もあるので、表から見た感じは違和感ないのですが、やはりネジ穴は気になりますね。せっかくなのでオリジナルKLUSONのヴィンテージに戻すことにします。Grover用の径に広げられたポスト穴をKLUSON用に戻すのは、かなり手間のかかる、そして繊細な作業です。レストアについては後編で細かくご紹介しますので、ここでは「さわり」だけご覧いただきます。Grover穴を一旦ふさいだ後、KLUSONのシャフト径で穴をあけなおし、塗料でレタッチしています。

パーツですが、おそらくネックを折った際にロッドカバーを紛失してしまったのでしょう。現在は右用の現行品が搭載されています。ヴィンテージと比較してみてください。

ヴィンテージの右用ロッドカバー。左から順に68年、70年、74年。
Custom以外でも、Les Paulロゴをあしらったヴィンテージ・ロッドカバーは何種類かあります。
今回は、Leftyのヴィンテージ・ロッドカバーがパーツボックスから出てこないので(笑)とりあえず、ストックの中から選ぶことにします。

ここからは、70年代レスポールの典型的なスペックとなる部分をクローズアップでご覧いただきます。

ネックはマホガニーの3P。塗装がひけて、継ぎ目が出ています。
トグルスイッチプレートは「R」が垂れている、50年代と同じものが使われています。ソーサーワッシャーも、スリットの太い50年代のパーツです。
この部分だけみると、50年代と区別つきません。
ボディは、69年から採用されている、パンケーキと呼ばれる3Pです。真ん中に一枚薄い板がかませてあるのが、ご覧いただけると思います。
内側からも観察できます。
テールピースのアンカーボルトを埋めた部分の塗装欠けを憂慮したのでしょうか、スタンダードやデラックスでも時々見ることができる、カバープレートが取り付けられていました。
学生時代は、このプレートが結構「外観を損ねている印象があって」嫌だったのですが、自分自身が歳を重ねるにしたがって、「なんとなく、程度の工夫がキュートで、憎めない」っていう印象です。皆さんは、好きですか?

このあと、本格的なレストレーションをご紹介するのですが、中編の最後に、「トップのスリーピース」が分かり易い、この角度の写真をご覧いただきましょう。

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【やみクロ】グリーンな日曜日 - 68年のレスポール・カスタム
随所に50年っぽさが遺る68年のレスポール・カスタムにクローズアップ。ボディの「ブラック」の色に注目しつつ、ロッドカバーなどのパーツやGibsonロゴなどの細部を見ていきましょう。

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