ちょっとチェット・アトキンス12弦

不思議なコンセプトが興味深い12弦モデルのチェット・アトキンスは、めったに市場でお目にかかる機会のないモデルです。微妙な立ち位置で、必ずしも成功したとはいえない「12弦チェット」をお楽しみください。

不思議なコンセプトが興味深い12弦チェット・アトキンス・モデル

1992年のカタログを見ています。フルカラーの豪華なページには、ヒスコレ前のLPリイシューや、

ABR-1時代のファイヤーバード…

に紛れて、チェット・アトキンス・モデルがフルラインナップで掲載されていて、大変めずらしいです。今回は、その中から「12弦モデル」の紹介です。

ロックに「ナイロン・クラシック・ソリッドボディ」という新境地を切り開いた希有の同モデルを、Vintage Maniacsではこれまで3回にわたり特集してきました。

ちょっとチェット・アトキンス - Gibson Chet Atkins CE

ちょっとチェット・アトキンス - Gibson Chet Atkins CE

2017.2.24

カタログで見るチェット・アトキンス・モデル

カタログで見るチェット・アトキンス・モデル

2019.3.15

チェット・アトキンス・モデルの仕様比較 - 初期と後期のパーツ紹介

チェット・アトキンス・モデルの仕様比較 - 初期と後期のパーツ紹介

2019.4.13

とりわけ12弦モデルは、チェット・アトキンス・シリーズとして、実際どんな用途があるのか、不思議なコンセプトが興味深い、めったに市場でお目にかかる機会のないモデルです。

レストアから仕上がってきたので、ディテールを見ていきましょう。微妙な立ち位置で、必ずしも成功したとはいえない「12弦チェット」をお楽しみください。

12弦チェットのパーツ・スペック紹介

サウンドホールは、ナイロン・モデル同様に、プラスチックのお皿に筆記体のロゴが入れられています。弦の数が12本であることを除けば、慣れ親しんだデザインですね。

コントロール・ノブは左肩のサイドに配置されていて、これもナイロンクラシックと同じ位置です。ステージで演奏してみると、大変使いやすいレイアウトなのがわかります。

ヘッドのロゴはゴールドのデカールですが、突き板の色に隠れて、ステージ上では判読しにくいと思います。できれば同じ筆記体でも、白蝶貝のインレイとかにしても良かったですね。

角度を変えると、やっと「Gibson」と読めました。

92年のカタログには、この12弦を含む5機種のチェット・アトキンスが掲載されています。

Chet Atkins自身はグレッチのイメージが強いギタリストですが、80年代のナイロンクラシック大成功を経て、ギブソンのニューウェイブ・モデルの旗手となったのは間違いないでしょう。

12本のスチール弦をしっかりとホールドするブリッジには、ギブソンらしい工夫がなされています。

ヘラの様に掘り込まれたブリッジは、弦を通すときにスムーズで、機能的なデザインになっています。

スチール弦のアースは、ブリッジエンドに取り付けられた金属プレートの裏側にハンダ付けされたワイヤーでコントロールキャビティまで延びています。

このブリッジは6弦にも流用されていましたが、後年ラインナップに追加される「Solid Top」のSSTモデルではダミーサウンドホールが省略され、ブリッジも普通のエレクトリック・アコースティックのような、ブリッジピンで止めるタイプになっています。

ヘッドはアウトラインが流麗でスリムに映え、12個のグローバーを纏ってなお大きさを感じさせない秀逸なデザインです。

ちなみに、カタログをご覧いただいて「あれ?」と思われたかもしれませんが、12弦だけはロッドカバーに「Chet Atkins」のロゴが入っていないんです。

バックプレートについて、気になった点をひとつ。

後年は、この「ボディ・センター・キャビティ」に変更され、くり抜きも大きくなりました。そしてキャビティはブリッジの真下に位置変更されているので、サウンドへの影響は大きいです。

それと、ネジ止めの方式が変更されて、ボディにダイレクトでスクリューを止めています。

初期はネジのアンカーが埋め込まれていて、バッテリー交換で何度ネジを止め直しても「スリップ」しない耐久性のあるパーツでした。

80年代に閃光のごとく登場し、瞬く間に世界中のロック・ギタリストを虜にした、ギブソン・ナイロン・エレクトリック「Chet Atkins」の、スチール12弦モデルは、よりどころの無さとレアさが共存する貴重なモデルです。

ピエゾ搭載ナイロン弦モデルとの違い

なかなか内部まで見る機会が少ないので、最後に基板をクローズアップしておきます。

画像で「あれ?」と思われた方は相当なマニアですね。その通り。この基板には、独立したボリュームコントロールが付いていません。

ブリッジに独立したピエゾを搭載しているナイロン弦モデルでは、各弦のコントロールができるようになっています。

「めずらしい」の一点でご紹介したチェット・アトキンス12弦ですが、実際にライブやステージで使われているシーンが記憶にないので、なぜ入手したのか、そもそも思い出せない不思議なギターです。デザインが素晴らしい、その一言に尽きるようです。

このカタログをいただいた「渋谷の道玄坂YAMAHA」は、綺麗なフロアと親切な店員さんが印象的な憩いの場でした。

99年にイシバシRock Sideでいただいたカタログ。チェット・アトキンス・モデルのラインナップも絞られ、12弦は掲載されなくなりました。

 次に読むなら

ちょっとチェット・アトキンス - Gibson Chet Atkins CE
チェット・アトキンスって、グレッチのテネシアンとかカントリージェントルマンを使っている印象が強いけど、実際は79年ごろにエンドースメントを解消してるんだよね。今回紹介するチェット・アトキンス・モデルは、80年代のギブソン・ギターの開発の中で、一番ミュージックシーンに貢献した楽器だと私は思っているよ。

掲載されている文章および画像の無断転載・引用(ソーシャルボタンは除く)は固くお断わりいたします。

 Vintage Maniacs Shopのおすすめアイテム

Vintage Maniacs Magazine Vol. 1

Vintage Maniacsのブログに著者コメントを追記し、編集・再構成した「Vintage Maniacs Magazine」。全ページフルカラー仕様で、資料としてもオススメです。Vintage Maniacsが切り込むディープでマニアックなヴィンテージギターの世界をお楽しみください。

ショップで見る
Vintage Maniacs 公式Webショップ