シャーラーのペグとギター殺人者の呪縛

W. Germany製でもレアなセンターリグのSchaller M6ペグを追いかけ続ける筆者と、ロンドン在住のSchallerマニアが繰り広げるディープな話。

レスポールを弾くジェフ・ベック

ジェフ・ベック・ファンなら誰もが憧れたアルバム「ブロー・バイ・ブロー(ギター殺人者の凱旋)」。そのジャケットに描かれたジェフは、ブラックのレスポール・スタンダードを弾いていた。しかもハムバッカーにシャーラーのペグ。衝撃的なギターサウンドは、後にコピーメーカーから多くのジェフ・ベック・モデルが登場するほどに人気があった。1975年当時、学生だった私は、先着プレゼントのペンダント欲しさに学校をさぼり、近所のレコード屋で開店を待ったっけ。ワールドロック・フェスティバルでは、京都まで阪急電車に乗って駆け付け、当然「あの黒いレスポールが拝める」と信じて出番を待ったのであった。ちなみにジェフは体調不良で出演しませんでした(泣)

ジェフ・ベックのオックスブラッド・レスポール

さて、そんなジェフ・ベックの黒い(といっても本来の呼称はオックス・ブラッド)レスポール、よく見るとSchallerペグのネジ止め位置が通常と違っている。実は私は17歳の時にこの事実に気づき、それからというもの、W. Germany製でもレアなセンターリグのSchaller M6を追いかけ続けているのです。今回はロンドン在住のコレクターで、私と同じSchallerマニアのCreve君とM6について話します。

シャーラーマニア同士のディープなトーク開始

Creve
そもそもSchallerのセンターリグって、わかる人いるのかな?
僕は17歳の時に、ジェフのギターのヘッドを裏側から撮影した写真をヤスダさんから見せてもらって。
Creve
すぐわかった?
なんとなく。でも、まずGroverじゃん…って思ってね。それからよく見るとツマミがキドニーじゃない。
シャーラーとグローバーのペグを見比べる
左:Schaller/右:Grover
Creve
僕もそう思った。最初はネジ穴がクルーソンの下側に来る位置だったから、102Cだと勘違い。
で、よく見たらM6なんだよね、ツマミが。
Creve
そもそもM6のセンターリグって、リグの位置以外は普通のM6と同じだろ?
じゃあ、画像で見ていこうか。まずはヴィンテージW. GermanyのクロームM6センターリグ。

センターリグのSchaller M6

ペグが入った発泡スチロールの容器

初期のシャーラーペグ

Creve
これは超初期だな。
さすが。どこでわかった?
Creve
ツマミがね。そもそも全然シェイプが違う。ボトムのラインがストレートだろ?この後すぐに傾斜がつくんだよ。たぶんGibsonのヘッドでも、角度によってぶつかる角度があったんじゃないの?
そうそう。PRSなんかだとアウトだよね(笑)
Creve
比べてみると、同じW. GermanyのM6でも、サイドリグだとツマミのボトムに角度がついている。

ボトムに角度がついたペグ

角度つきのペグを反対側から

角度のついたセンターリグも持ってるよ。

ゴールドのシャーラーペグとレスポールのヘッド

センターリグでゴールドのペグ

Creve
へえ、ゴールドのセンターリグかぁ。ツマミのシェイプとしてはサイドリグと同じだな。

サイドリグのSchallerのシェイプ

センターリグのSchallerのシェイプ

初期のペグと並べてみると、ボトムの角度がわかりやすいね。

初期のシャーラーペグと見比べ

ボトムの角度の比較

Creve
ほんとだ、全然違う。
ジェフのSchallerはツマミが写真のとおり初期じゃないから、表から見ただけだとサイドリグかな?って誤解しちゃうよ。

ジェフ・ベックのギターのヘッドストック

Creve
そこまで見てる人少ないでしょ?
梅田の楽器屋でアルバイトしてるとき、在庫のSchallerに“これ”を発見したときは狂喜したよ。でも、価格が当時のアルバイト1週間分だったな。
Creve
あほだね。
そう、自分でもそう思う。だけど数あるコピーモデルや現行のGibsonのアーティストモデルが、いまだにSchaller M6のセンターリグに辿り着かずに、サイドリグやアジア製のセンターリグを搭載しているのをみると、できれば復刻してほしいものだよね。
Creve
君だけだよ(笑)
そうかなあ(笑)
Creve
まあ、ここまで見たんだから、もう少しSchallerについてトークするかい?
Schallerは、古くはGibsonブランドでOEMしたり、Zemaitisのお気に入りだったり、最近ではPRSに搭載されたり。本来もう少し知名度があってもいいと思うけどね。
Creve
そうだね。GibsonのDoveとか、センターリグのM6にGibson刻印とかあったもんな。
じゃあ、改めてじっくり見てみよう。まずはサイドリグ。

分解したSchallerのペグ

シャーラーのペグをアップでチェック

Creve
なんでバラしたの?
うーん、見やすいかと思って。関係無かったな。
Creve
Schallerって、もともとW. Germanyだからミリスペックだろ?1990年以降はGermanyだけの刻印になるから、ヴィンテージファンならできればW. Germanyにこだわりたいよ。
意味なし!あ、違った。異議なし。ミリスペックなのは、ボタンを留めるネジをGroverと比べるとわかる。左がSchaller、右がGrover。ネジの頭も違うね。

SchallerとGroverのネジを比較

ネジを斜めから確認

ネジの頭の形が違う

Schaller M6 Miniを観察

Creve
ミニとかあるだろ?
マイケル・シェンカーだな。じゃあ、とっておきのを見せようか。

Schaller M6のダブルリグ

Creve
お、ダブルリグかい?
そう、よく見ないと気づかないかもね。上下にストレートリグが出ているM6 Mini。

ダブルリグと通常のセンターリグの比較

Creve
普通は下側だけだよな。

ゴールドのセンターリグと見比べ

ゴールドのミニタイプのペグ

ゴールドのMiniは、実は1982年のコリーナ・エクスプローラーに搭載されていたモデル。Gibsonの刻印入り。他にもリグのないタイプも稀にあったけど短命だったね。

箱に入ったゴールドのミニタイプ

Creve
Miniにはリグの位置がストレート、ストレート上下、サイドの3種類があった。この頃は、ストラトでもコンポーネント系にSchallerを搭載するケースが多かったんだろうか。
まあ、とにかくジェフ・ベック・モデルへのチューンナップには、センターリグのSchaller M6が欠かせないってことだけは僕らの共通意見だね。

ゴールドのペグを観察

ゴールドのペグの頭のネジ

怪しいペグを発見

Creve
この写真を説明してよ。

ネジとワッシャが入っていた封筒

怪しいペグ

あ、これね。デッドストックのボックスに入っていたネジとワッシャの封筒と、北米のギターショーで偶然見つけた怪しいSロゴのセンターリグ。まあ、こんな事やってる人もいるんだって感じ。尊敬するよ。
Creve
ひゃー、良く見つけてくるね(笑)

 次に読むなら

クルーソン・ペグを年代別に分析 - ヴィンテージ・ギブソン編
ヴィンテージのクルーソン・ペグはシュリンクと呼ばれる樹脂素材の劣化が特徴です。ツマミの経年変化に注目し、分解もしつつスペックの変遷をご紹介します。

掲載されている文章および画像の無断転載・引用(ソーシャルボタンは除く)は固くお断わりいたします。

 Vintage Maniacs Shopのおすすめアイテム

ジュエリーと同様の工程で作られるドレスアップ・パーツ

高級素材を吟味し、ブランド・ジュエリー同様の製作工程で作られる、ドイツ製のプレミアム・パーツ。オーナーご自身のセンスでセレクトしたパーツで、世界に一台のドレスアップをお楽しみください。

ショップで見る
Vintage Maniacs 公式Webショップ