忘却の彼方から「ステレオなカスタムSG」
Joe Walshと一緒に、セントルイスにある彼の友人のギターショップ「Silver Strings Music」でEd Seeligから購入した、バリトーン搭載のSGをご紹介。超レアな「One of the Kind」のCustom SGをお楽しみください。
目次
バリトーンが追加された「カスタムSG」
SG Customではなくて、カスタムSGです。ロッドカバーには「STEREO」の文字、サーキットにはバリトーンが追加されています。
このSGは、90年代初旬にミズリーで開催されたギターショーの翌日、Joe (Walsh)と一緒にセントルイスのオリーヴブルーバード通りにある、彼の友人のギターショップ「Silver Strings Music」で、オーナーのEd Seeligから購入した何本かのSGの一本です。
EdとJoeは随分と仲が良くて、レスポールやダブルネックの話題で盛り上がっていたのですが、私はショップに足を踏み入れた瞬間から、数本のSGに目を奪われていました。
1970年代初めに、この地で中古ギターショップをオープンしたEdは、このギターを譲る気はなかったと言っていました。
「いくら出すか?」ではなくて「なんで欲しいのか?」
ヴィンテージギター・コレクターがSGを持っている理由は、大別して「①SGが好きだ」「②安いから買った」です(いえいえ、もっとたくさん理由はあると思いますが…笑)。今は昔の話になってしまいますが、ギターショーに出展しているのは概ね顔見知りばかりですから、ギターのトレードでは「いくら出すか?」ではなくて「なんで欲しいのか?」っていう、他愛無い会話と無駄話の楽しさがすごく大切な、そんな時代でした。ですので、本当に欲しいギターを、譲る気の無い人から入手するには、身振り手振りで、なんとなく「情熱らしきもの」を、伝えようと試みるわけです(笑)
Edについては、NAMMショーのホームページにインタビューが掲載されているので見てみてください。記事の中で、彼はセイモア・ダンカンをはじめとして、ロックシーンを彩る多くのミュージシャンやビルダーと親交があると解説されていますね。
不思議なことに、こんなにコンディションが良いのに、シリアルの最後の桁をダブル刻印してあって読みにくい。
ペグを見ると、すでにGibson Deluxeの刻印に移行しています。
バリトーンの仕組み
ところで、バリトーンって、ESシリーズをコレクションしておられる方にはポピュラーでも、ソリッドギターファンには、案外なじみのないGibsonの回路ですよね。B.C.Richファンのほうが、バリトーンについては、よくご存じかもしれません。チキンヘッドと呼ばれている、コミカルなノブは見覚えがあると思います。BBキングのルシールにも搭載されていますね。
私も、実際にライブでバリトーンスイッチを「カチャカチャ」使うわけではないので、どのポジションがどうなっているのか、よくわかっていないのです。
後学のため、よっちゃんに教えてもらいました。
どうやら、この茶色くて平べったい四角の物体と、フロントとリアピックアップの間に埋め込まれたシルバーのボックス(チョークコイル)が、6段階の音色をクリエイトする怪しい仕掛けのようです。
ポジション「1」は、バリトーン回路を通さないクリーンな音色。「2」は高音域カット。「3」以降はカットされる音域が下がっていき「6」では低音域がカットされる、という具合です。SGの場合は、ワイドピックガードの下に、ピックアップより少し小ぶりのチョークコイルが上手く収まっています。これ、3ピックアップのカスタムだと、入れるところが無いような…。
One of the Kind
これまで、一本しか見たことのないバリトーン搭載SG。さすがに手作業っぽい部分もちらほらと見えます。
ネックが3ピースで、Gibsonロゴはクローズドオーなので、70年代仕様なのですが、5プライのピックガードの二段目のホワイトレイヤーが厚い前期タイプなので、ルックス的には60年代後半っぽくて、随分としまって見えますね。
大きめのキャビティや、長めのバックプレートスクリュー。
カスタムオーダーならではのレアなスペック満載なのに、ぱっと見た目では普通のスタンダードに見える、隠し味っぽいクールさが、オーダーしたギタリストの人柄を思わせます。
さくっと紹介させていただきましたが、裏腹に「超レア」なCustom SG、いかがでしたでしょうか。まだまだ北米コレクターの手元には、こうした「One of the Kind」が大切に保管されているのでしょうね。
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