ソンブレロ・ノブの秘境
60年代から70年代に広く使われたソンブレロノブには、いくつかのバージョンが存在します。それらの実物を比較しながらタイプの違いを見ていきましょう。おもしろいアフターパーツや、自分自身、初めて発見したバージョンのノブも最後にご紹介します。
目次
4種類のソンブレロノブ
VM(Vintage Maniacs)とうとう踏み込みましたね。
FV(Fukazawa Vintage Club)うーん、ソンブレロノブだけは自分でも未消化なので、手元の個体を観察する事ぐらいしかできないけど。生産工程や構造を掘り下げてきたVintage Maniacsのパーツ考察として、今回は 「浅い」と言わざるを得ないのは致し方ない印象を拭えない。
VMいつになく回りくどいですが、とりあえず説明してくださいよ。
FV意外に知られていないけれど、60年代から70年代に広く使われた、ソンブレロノブとよばれるボリュームとトーンのコントロールノブには、異なるバージョンがいくつか存在する。順を追って説明していこう。冒頭のノブはデッドストックで、裏側から見ると「マーキングが何もない」仕様だ。便宜的にType-Aと呼んでおこう。
VM全体に癖のない、のっぺりした裏側ですね。
FV表側の数字もクローズアップして見ておこう。
VM「4」の文字がつぶれてますね。これが原因でリジェクトされたパーツかな? 大量にありますね。
FV手元にあるデッドストックは、全部同じように「4」がつぶれていて、しかも「Vol.」ノブしか残ってなかったから、なんらかの原因でリジェクトされたんだろうね。
VMしかし、ソンブレロノブってネーミングもカッコいいし、実際のシェイプも、てっぺんにメタルプレートを貼ったり、手が込んでてCoolです。
FVサイドから見ると、背の高さもあって手に馴染むし、工業デザインとして秀逸だと思う。もちろん当時Fenderが製造していたアンプのノブと似ていたりして、「完全オリジナルなデザイン」ではないけれど、従来の透明樹脂をペイントしたノブに比べると、生産工程が楽な割には存在感が増していると思わないか?
VMそういえば、最近のレギュラーモデルについているソンブレロノブとパーツボックスの中で混ざると わからなくなるんですよ。
FV何を言ってるんだね、阿保か君は。どうみたって全然違うだろ。数字の向きからして。
VMどひゃー、初めて気が付きました(笑) 数字が内向きと外向きになってますよ。
FVソンブレロノブって、私が知っている範囲で4種類あるんだ。これとこれの違い、判るかな?
VMわかりません…。
FVあっさり投げ遣りになるなよ。これならどう?
VMあ、わかりました。上のノブはシャフト穴の中にポッチがありますね。
FVそうなんだ。同一金型のキャビマークかとも思ったけど、区別する意味がないから、ポッチ有りと無しでは、たぶん使っていた金型と時代が異なるんだと思うよ。これをType-Bとしておくか。
VMややこしいのは、表側から見て、ほとんど差が無いことです。
FVそうそう。だから、4個ないし3個が交換されずにセットでオリジナルのまま残っているかを確認するのには、外して裏側を見るしかないって事だ。
VMショップの店頭で、ヴィンテージギターからノブを外してチェックするのは勇気がいりますね。
FV店員さんも困っちゃうね(笑) 次のフライングVのノブが3個とも同じで揃っていて、 しっかりとオリジナルのままだ。
VMあれ? さっきのType-Bと「ポチポチの位置」が違いませんか?
FVよく見てるねえ。こっちは不揃いの3個ポチだろ。
FVあきらかに、Type-Bとは異なる金型から成型されているね。一応Type-Cと呼んでおこう。
VMうーん、ゴマシジミの亜種みたいですね。
FV読んでる人が解らないよ、その例えは(笑)
VMとなると、興味深いのはType-Dです。
FVおいおい、勝手に話を進行させないでくれよ。次の写真は、60年代後期のSGだ。
FVこれはType-Aだね。
VMお、ひっかけですね(笑) 違いを探しそうになりましたよ。
FV次の70年代に入ってからのSGもType-Aかな。
VMいよいよ次あたり、Type-Dですか?
FV80年代に入ると、明らかに金型が変わっていて、ツバの部分に半円形のマーキングが4か所に入ってくる。
VMうーん、それでも表側からだと、わかりにくいですね。
FVただ、手持ちのギターをチェックしていくと、オリジナルオーナーから譲ってもらったギターで、 Typeの異なるノブが混在しているギターは無かったよ。 移行期には混在しているギターもあるかもしれないから何ともいえないけれど、いつか機会みてはっきりとさせたいよね。カラマズーからナッシュビルに移った時に、古い金型を持っていかなかったのかもしれないし。
VMそうですね、金型の固定資産管理って、償却計算とかめんどくさいですから。州をまたいでわざわざ小さなパーツの金型を新しい工場へ移管したとも思えないです。
FV次は70年代のSGカスタムだ。
VMこれ、Type-BとType-Cが混在してますけど…。
FVメモを見ると、このギターはアーリントンのギターショーで買ったときに2個が新しいノブだったから、95年12月に自分で同年代のノブに付け替えたって書いてある。でも、当時は気が付かなかったけど、ポチの位置が違うね。結局Type-AとBとCが混在している。
VMまあ、指摘されなければ気にならない部分ですけど、言われると「揃えたく」なりますよね。そういう意味では、マニアにいらん心配を増やす、細かすぎる企画ですよ、今回も。
FVすまんすまん。
おもしろいアフターパーツ
FVちょっとおもしろいノブを紹介しておこうか。
VMこれ、アフターパーツですよね。どこがめずらしいんですか?
FVどこでどう入手したのか、自分でも記憶がないんだけど…変なのは、表側はエンボスにシルバーのペイントを入れているのに、裏側の数字もエンボスになっているだろ? しかも、数字の位置が表側と合ってないんだよ。
VMあ、ほんとだ。4の裏に10がきてますね。しかも、裏側エンボスの意味が全く無い。なんでしょうね、 これは。
FVクリアー樹脂で成型してシルバーの文字入れをしてから、裏から黒で塗装するつもりだったのかも。
VMとりあえず、モノはひっくり返したり裏返したり、分解することって大事だって、あらためて痛感します。
FVその通り。内部構造や生産工程、成型から外観にあらわれる曲線・直線は、デザインというよりも微妙に感覚的で数値にあらわれない形状なので、とりあえず「どう作ったか」が想像できないと、 原因にたどり着けない。
VM今回は、表からは気にならないソンブレロノブが、TypeA~Dまで4種類あるという発見でした。
FVおいおい勝手に終わらないでくれよ。たぶん、Type-Dまでは見分けているマニアの人も多いと思うよ。
VM多くないと思いますけど、いますよね(笑)
今回初めて発見したバージョン
FV最後に「自分自身、今回初めて発見」した、Type-Eを紹介するよ。いままで、「キズかな」ぐらいにしか思ってなかったんだけど、接写レンズで拡大してみたら、ちゃんとした「数字」 だった。
VMえー、解らないなあ。どこですか?
FVこれ。
FVほら、よく見ると「キズ」じゃなくて、数字の「3」がひっくり返っている。
VMうへー、よくそんな細かいところまで見てますね。
FV時代で見ていくと、TypeA~Eまで、どんな順番だったんだろうねえ。
VMまた、ヴィンテージ・マニアの悩みが増えてしまった今回のコーナーでした。皆さん、申し訳ありません(笑)
FVほんと、細かくて申し訳ないです。
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