フライングVのルックス (中編) - 3PLYと4PLYのピックガード
フライングVのピックガードの「3PLY」と「4PLY」は似て非なるもの。40年も前のギブソンのデザイナーのセンスに感嘆しつつ、ピックガードで大きく変わる印象を見ていきましょう。
目次
発見してしまった、唐突にやってくる違和感
大きなフライングVの小さな違和感は、気づいてしまうといつまでも脳裏に遺り続ける「悩みの種=インセプション」です。それを払拭するためには、ことごとくディテールに拘り、細部にいたるまで再現するための自己満足、すなわち「資料と熱意と運」を三拍子そろえる必要があります。
ギターショーで何気なく購入して、大切に扱ってきたギターを、ある土曜日の午後、テラスでエスプレッソでも飲みながら、弾いたり鑑賞したり、撮影したりしていると、「発見してしまった、唐突にやってくる違和感」がスタートです。そして、丁寧に弦を緩め、スクリューを回し、ブリッジを取り外すと、そこに現れたのは例えば「ホワイトな裏面」だったりするのです。Vマニアなら一度は、ご経験があると思います。
要するに、前編でご紹介した、これ(3PLY復刻PG)と、
これ(4PLYオリジナルPG)の違いですね。似て非なるもの。
中編では、引き続き残りの2本を見ながら、新しく製作していただいた2mm 4PLYの美しさをご紹介していきます。
中央のブラックレイヤーが厚い3PLY
日焼けしたホワイトがアンティークな雰囲気満載の80年代です。ピックガードのブリッジ右ラウンド形状を見ると、80年代前半の個体でも、後期の部類に入ります。ノンオリジナルの3PLYの真ん中のブラックレイヤーが太いので、随分と縁取りが濃い印象になっています。
わざわざオーダーで作成されているので、形状・ネジ穴位置ともにパーフェクト。十分に満足のいくピックガードでした。でも、とんがった部分は、かなり3PLYが目立ちますね。
ヘッドストックのクローズドオーにデベソスクリューも健在。余談ですが、ギブソンには是非シャモジヘッドでバハマブルーのVを復刻してほしいものです。
3PLYと4LYの比較
これはレストア途中で、暫定的に3PLYのピックガードを使いパーツ類を抑えていますが、もともと搭載されていたのは、次の画像左側のオリジナル・ヴィンテージPGです。
きれいにリペアされていますね。
一方で、3PLY(3mm)は強度面で4PLY(2mm)に勝りますので、ライブでガンガンとヴィンテージVをかき鳴らすギタリストにとっては、オリジナルが経年のシュリンクなどで割れる前に交換しておくのも、実用的な使い方でしょう。
日焼けの跡から、もともとのPGは、ブリッジ横のアールがシャープな80年代前期仕様だとわかります。
ブリッジ横のアールとポスト穴
ここで、おさらいになりますが、ブリッジ横のアールを比較しておきましょう。
下が80年代で、上が70年代です。随分と形状が異なりますね。
気にしなければ、どってことない部分ですが、ピックガードを交換するときには、ここをしっかりと見てリプレイスメントパーツを選びましょう。アールが緩やかになる時期は、すでにブリッジがABR-1からナッシュビルに移行していますから、ポスト穴は、このように広くなります。
40年前のセンスに感嘆
では、中編最後になりますが、今回新たに作成していただいた4PLY 2mmのピックガードを、前述の75年モデルに搭載してみましょう。
いかがですか? ちょっとした違和感を補正するだけで(意外と手のかかる作業ですが)これほど「すっきり」するのは、本質的に「フライングVは4PLY」と最初に決めたギブソンのデザイナーのコダワリが美しいからだと、あらためて40年も前のセンスに感嘆するわけです。
やっぱりVのピックガードの裏面はブラックがCOOL!!
「緩やかなR」と「シャープなR」の比較
80年代のブラックVも、4PLYですっきりスリムな印象に。
これも80年代シャモジヘッド。3PLYから4PLYになりました。
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