チェーンソーと呼ばれるプロテクターケース

ギブソンが70年代に発売した「チェーンソーケース」や「ロケットケース」と呼ばれている、棺桶のような樹脂成型ハードケース。70年代に思いを馳せながら、この「プロテクターケース」を見てみましょう。

ギブソンのチェーンソーケース

ギブソンが70年代に発売したギターケースに「チェーンソーケース」や「ロケットケース」とコレクター仲間で呼ばれている、棺桶のような樹脂成型ハードケースがあります。カタログでみると「Protector Case」と表記されているので、正確には「Gibson USA プロテクター・ハードケース」と呼べばよさそうです。

プロテクターケースのカタログ

成形機の圧力トン数が大きくなって金型が大型化し、樹脂成型が1m以上のものを型抜きできるようになると、各ギターメーカーは木材を曲げ丁寧に手作りされた従来の木製ハードケースを見限り、一気に樹脂ハードケースに流れます。ブームの火付け役はOvationでしょう。

Ovationの樹脂ハードケース
写真はブラックですが、登場した初期はブラウンでした。

実はこのプロテクターケースには2グレードありました。カタログに載っているのは、ロゴも成型でケースの蓋を止めるフックも樹脂の一体成型のタイプでしたので、長年使っているとその部分が折れてきて外れてしまいます。一方で高級タイプのプロテクターケースには、Gibsonのロゴが入った大きなメタルプレートが取り付けられ、フックも金属になっていますから丈夫です。

高級タイプのチェーンソーケース

金属製のフック

金属製のヒンジ

チェーンソーケースのGibsonロゴ

対応するギターのモデルは基本的にレスポール・シェイプです。中のアンコがしっかりしているのでホールディング性能が良く、従来の「ハードシェルケース」と呼ばれる木製のものとは耐久性で比べものにならないくらい優位だったでしょう。

チェーンソーケースの内側

今回はソリッドボディのマローダーを入れてみました。

マローダーを入れたチェーンソーケース

ネック部分のサポートもしっかりしています。

マローダーとプロテクターケース

お馴染みの小物ポケットも付いていますね。

ロケットケースの小物ポケット

内側の蓋にまでしっかりとGibsonロゴを入れているあたり、当時台頭してきたアジア製のコピーに頭を悩ますノーリンのアクションが見て取れます。

Gibsonロゴ入りのロケットケース

あ、そうそう、マローダーで思い出しました。同じ時期のギブソンのカタログに、エンドーサー(契約ミュージシャン)が載っているのですが、さすがに早々たるメンバーで、ジェフ・ベックにロン・ウッド、キース・リチャーズ、ジミー・ペイジ、ボブ・シーガー、KISS。そんな中、なぜかキース・リチャーズがマローダーのナチュラルを弾いているんですよ。ロンは黒のS-1。当時のギブソンは、かなりこのモデルに力を入れていたんですね。使ってみると良いギターでしょ?しかも中古で見つけると、おおむねプロテクターケースが付いています。

マローダーを弾くキース・リチャーズ

今から振り返ると「ギブソン何やってんだ?」的な70年代ですが、それはそれで試行錯誤しながら新しいものを開発しようとするチャレンジ精神が培われた時代ですね。古いものをそのまま復刻して高額で売ることができれば、誰も「新製品やニューコンセプト」に手を出してリスクを冒したりしなくなります。もちろん「復刻」はファンにとって嬉しい事であり必要なことです。でも個人的にはリスクの先にスタンダードがあるような、そんなデファクトを目指す心意気が開発者には必要だと思うわけです。70年代ギブソン、万歳!

ギブソンのプロテクターケース

ギブソンのロケットケース

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