ABR-1のサドルに注目 - ヴィンテージの仕様の変遷
レスポール・ファンにはおなじみのノンワイヤーABR-1ブリッジですが、ヴィンテージにはいくつかの種類があり、オリジナルの状態で発見するのはかなりの幸運が必要です。
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レスポール・ファンにはおなじみのノンワイヤーABR-1ブリッジですが、サドルとスクリューが完璧なオリジナルの状態で発見するのはかなり幸運が必要です。そして購入する場合には高額の出費になることでしょう。というのも、ヴィンテージABR-1のサドルにはいくつかのバリエーションが存在するからです。
下記リストは、ヴィンテージABR-1のサドルの種類です。
- シャープヘッド/シャローヘアライン(上の画像の右側)
- シャープヘッド/ディープヘアライン(上の画像の左側)
- フラットヘッド/ディープヘアライン
- ナイロンサドル
先ほどのリストの中で、57~59年のレスポールに搭載されていたオリジナルは①のサドルです。その後60年からは②になりサイドのヘアラインが粗くなります。ご存じのとおり同じブラスサドルでも62年以降は③になりますので、シャープヘッドは非常にレアな個体です。
シャープヘッドは短期間でフラットヘッドになります。当時おそらく弦が切れやすいなどの具体的なデメリットがあったからでしょう。といってもサドル自体の形状などは全く同じで、後工程でヘッドを少し平らに均しただけです。ノンワイヤーのABR-1の場合、シャープヘッドだと弦が切れやすくサドルも脱落しやすいことになり紛失の危険が増します。サドルを無くせばリプレイスメント・パーツに交換せざるを得ないわけです。こうしてギターに搭載されたノンワイヤーABR-1のサドルは、長い年月の間に別スペックに交換されてしまう可能性が高いのです。
では個々のブリッジをクローズアップで見てみましょう。
1959年のABR-1
ミントコンディションの59年のABR-1ブリッジです。シャープなサドルが特徴です。2個のサドルはスペックの過渡期で天面の面取りが少し広い印象を受けます。
60年代中期のPat Number ABR-1
60年代中期から登場するPat NumberのABR-1ですが、サドルは60年以降のフラットヘッド/ディープヘアラインのブラス製です。現在アフターマーケットで登場しているブラスサドルには、この時期の個体を模倣したものがありますが、本来の59バーストの仕様からみれば現在のギブソンが復刻しているシャープなサドルの方ががサウンド的には近いでしょう。
ナイロンサドル
ワイドピックガードのSGオーナーに人気があるのはナイロンサドルです。ブラスやスチールのサドルにくらべメロウなサウンドといいますか、印象が違ってきます。
さて、錆びたサドルから露出したブラスカラーはヴィンテージの魅力のひとつでもありますが、現行のギターでもサドルまでキレイにエイジドしているケースはまれです。このあたりはコレクターでもプレイヤーでも案外すぐに目がいくパーツですね。
次はゴールドのABR-1に搭載されているデッドストックのサドルを見てみましょう。50年代から60年代初期にかけて、パーツひとつにも日々改良を加えていくギブソン社のスタッフの努力が感じられますね。
最後に、今回参考資料としたABR-1ブリッジを年代別に見てみましょう。手前から59年、62年、61年、67年、80年、2005年となっています。
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