やみクロ - ジャガーっていうか、ノブの話

80年代にメリーランドで購入したフェンダー・ジャガー。ハードケースの中には72個のノブが入っていました。今回はそのノブをじっくりと観察しつつ、ジャガーのパーツや細部にもクローズアップする「やみクロ(やみくもクローズアップ)」です。

フェンダーのクールなネーミング

フェンダーの14以上あるモデル名の中でも、とりわけ「ジャガー」と「ムスタング」は、カーデザインを彷彿とさせるクールな名称です。当時のフェンダー社のデザイナーが意図したかは不明ですが、ムスタングは何となく「1964年にフォードから発売されたベビーブーマー向けスポーティーカー“マスタング”」を彷彿させます。実際70年代のレーシング・ストライプはクールでした。一方ジャガーは英国の高級車「ジャギュウワー(と発音するそうです)」のような、ノーブルなボディラインを訴求しているのでしょうか。「CAR」や「LPB」「ショアラインゴールド」などカラフルな塗装が似合いますが、サンバーストもレトロでキュートですね。

左のジャガーは、80年代にメリーランドを訪問したとき、Gil Southworthから購入しました。多分ハードケースから出したのは30年ぶりぐらいかな? 右は、その15年後にチャタヌーガのPAWN SHOPで見つけて、ずっと持っています。概ね同時代のギター2本になりますので、双子のようです。

ローラーノブ/スライドスイッチとデカール

今日は、お天気が曇りです。ギターの撮影にはうってつけなので、パーツやロゴのクローズアップも織り交ぜて見ていきましょう。

で、まあ、そもそもが、この「回すノブ」がちょっとギブソン派には違和感があるのですが(チェット・アトキンス・ナイロンはこれでしたね)、使った方の感想はいかがでしょうか。私は、演奏中に触ってしまいがちな位置にあるのと、クルクル回りやすいので、以前は苦手でした。

こっちのスライドスイッチに至っては、3個あるのですが使ったことがないので、どういうファンクションになっているのか…。

フェンダー社の水性デカールは、斜め横から見ると「ダブルレイヤー」になっているのがわかると思います。

アフターマーケットのリプレイスメント・デカールには、シングルレイヤーのモノが多いようですが、ここではオリジナルのクローズアップで、エッジのダブルレイヤーをご覧いただきます。

MXRと同じノブ

パーツでいつも気になるのは、ジャガーは高級機種なのに、なぜかムスタングと同じノブを使っているんですよね。

しかも、Gilから買ったときに、ハードケースのポケットに、ノブがこんなに入っていました。

このノブですが、かねてからMXRを見ていて「似てるなあ…」と思った読者の方も多いと思います。私もそうです。あまり「入念に比較する機会」がなかったのですが、今回は裏返して精査してみることにしました。

MXRのノブの裏側は、こんな感じです。

アルファベットと数字があります。ジャガーと見比べてください。

似ているのではなくて、なんと「同じ金型」でした。

13種類のノブ

ケースのポケットには72個のノブが入っていましたが、裏の刻印を分類すると、次の13種類でした。

ジャガーのノブの裏側 S647 S マーク
ジャガーのノブの裏側 S マーク
ジャガーのノブの裏側 : マーク
ジャガーのノブの裏側 8 マーク
ジャガーのノブの裏側 S647 O マーク
ジャガーのノブの裏側 S647 H マーク
ジャガーのノブの裏側 S647 L マーク
ジャガーのノブの裏側 マーク
ジャガーのノブの裏側 S647 C マーク
ジャガーのノブの裏側 S647 M マーク
ジャガーのノブの裏側 L マーク
ジャガーのノブの裏側 S647 B マーク
ジャガーのノブの裏側 S647 W マーク

アルファベットと数字が混ざっていますね。A~Zまでの26文字と数字の1~0まで10文字あわせて36あります。

金型が6×6の36キャビなら「ブランク」と「:」があるので、読み間違いする「O(オー)と0(ゼロ)」、「6と9」をスキップしていると考えられます。「S647」が出荷先メーカーコードかな?とも思ったのですが、MXRをみるとS647が入っていますので、出荷先はランダムですね。S647が入子になっていて、入っているのと無いのがあります。
(欧米では、数字のイチを と書くので、の小文字 とは、読み間違いません)

ここまで、似たようなノブの裏側ばかり見ていただいたので眼が疲れたと思います。お付き合いありがとうございます。

ジャガーの細部にクローズアップ

ジャガーのハードケースは、外観はストラトやテレキャスと似ているのに、ちょっとしたネックポケットの位置の違いで汎用性がありません。あらためてジャガーやジャズマスター用にヴィンテージのハードケースを探すと、なかなか市場に出てこないので厄介です。

ブリッジカバーを外すと、こんな感じになっています。

ミュート用の黒いスポンジが付いていますが、経年で剥がれている個体も多いです。

なんとなくチューニングが狂いそうなヴァイブローラユニットですが、案外しっかりしていて、ライブでも使えますよ。

しかし、あらためてじっくり観察すると、このロータリースイッチっぽいのとか、壊れたとき用に、予備のパーツ持っておきたくなりますね。

配線は、間違えないように3色です。

ピックガード用ネジは、ギブソンよりも一回り大きくて耐久性があります。

いつも思うんですが、60年代の工業デザインって、ギブソンやフェンダーだけでなく、クルマのバンパーとかフェンダーミラー、トースターやコーヒーメーカーも、すごく曲線が美しくて、自然の滑らかさっていうか、蔦が描くループのような、手描き特有のニュアンスがありますよね。

デジタルでコンピューターが計算した曲線の「かっこよさ」とは違った「優雅な美しさ」という印象です。褒めすぎかな?(笑)

ジャガーの泣き所はアームバーです。私は2台とも「オリジナル」だと思っていましたが、ちゃんと比べると、片方はどっかでムスタングのアームバーと入れ替わっていました。撮影がおわったら、倉庫のムスタングをチェックしなきゃ…。

長いほうがジャガー。

最後に、ノブがMXRと共通なので、ブーツラバーもこの通り装着可能です。必要ないですが(笑)

エボニーのような真っ黒のハカランダ指板
間違って年代違いのネックスクリューを使うと、指板を突き抜けてしまいます
結構交換されている頻度の多い、ストラップボタンとスクリュー

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