トラスロッドカバーのネジで紐解くギブソンのこだわり

ギブソン社にとってヘッドストックはブランド名を表示するスペースであるとともに、その独特の形状によって直感的に“Gibson製”と知らしめる大切な部分です。そのヘッドストックをさらに“らしく”するトラスロッドカバーのスクリューを見ていきましょう。

ギブソン社にとってギターのヘッドストックはブランド名を表示するスペースであるとともに、その独特の形状によって直感的に「Gibson製」と知らしめる大切な部分です。そのヘッドストックをさらに“らしく”するパーツがトラスロッドカバーです。Vintage Maniacsでは以前トラスロッドカバーの年代別スペックを紹介したので、今回はそのトラスロッドカバーを固定する小さなネジについて、画像で見ていきましょう。

記事冒頭のネジ集合画像は、左側が「ピックガード用スクリューを含む80年代~現行ヒスコレまで」、右側が「ヴィンテージのデッドストック」です。ヘッドの面取りが異なるので容易に区別できると思います。では50年代のスクリューとそれ以降の違いはどうでしょうか。

左:59年頃まで/中央:60年代初期/右:70年代に多く見られるタイプ

上の画像は、一番左が59年頃までのスクリューで、溝が途中で止まっています。中央は60年代に多く見られるヘッドの面取りが粗く、溝が上まできているタイプ。ただし溝の最後の一周が中途半端なので60年代初期とわかります。一番右はヴィンテージですが、70年代に多く見られる頭の面取りが丁寧になったタイプで、この頃になると古いネジと新しいネジが混在し、モデル毎に時代が交錯します。

では59年までの、ヴィンテージギターマニアが最も探しているスクリューをクローズアップで見てみましょう。

あまり個体差はなく、ひと目でこの年代と判別できます。この画像では、59年のレスポールに搭載されていたセットをそのまま撮影しています。トラスロッドカバーは59年後期までは、中央のブラックテーパー部分の盛り上がりが高いので、60年以降の2プライと区別できます。

60年になると溝がだいぶ上部まできます。このころのロッドカバーは59年以前とは異なりますが、一般的には知られていないので、eBayでは60年代のSGなどから取り外したものが59年のものとして掲載されている事もありました。

同じ60年代でも初期のSGレスポールには、まだブラックテーパーの高いものが採用されていて、スクリューも50年代と60年代の過渡期にあります。

次は65年のレスポール・スタンダード・クラウンインレイに搭載されていたスクリューです。ロッドカバーの図柄からギターの年代が特定できるので、ネジの資料としては秀逸です。頭に一部面取りが入りだしました。

この後、面取りが丁寧になり70年代へとつながるのですが、ギブソンのパーツは“先入れ先出し”が徹底されている訳ではないので、良く売れたモデルとそうでないモデルで、工場からの出荷タイミングが異なったりします。またカラマズー工場が閉鎖される直前には、一気に古いパーツ(特にネジ類)が混在しますので、良く見てみるとヴィンテージのネジを発見することもあります。なので今回の記事は、あくまでガイドラインとしてご参照ください。レスポール・カスタムは3プライで中央のホワイトのテーパーが広い68年です。ネジの頭は面取りされています。

ヒストリックコレクションのスクリューは、専門的に見ると“別もの”です。現在のネジ工法では当時と製造工程・機械が異なるため、ヴィンテージのスペックは再現できません。ただ画像のように現行では“似たもの”でも、かなり良い感じが出ています。

というのも2001年前後にネジがひしゃげたようなヘッドになりファンの失笑を買ったことから、再度仕様変更する努力があったのです。

最後に筆者のコレクションから、71年レスポール・ゴールドトップのピックアップリング用のブラスの釘のデッドストックを掲出しておきます。スクリューや釘の細かな部分までギブソンのこだわりが感じられますね。

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入手困難な50年代仕様のヴィンテージ・ロッドカバー・スクリュー

ギブソン59バースト・パーツの中で、もっとも入手が困難な部品にロッドカバー・スクリューがあります。ネジ山が途中で切れているスペックは50年代だけの仕様。カラマズー工場のレフトオーバー・パーツからのデッドストック・ロッドカバー・スクリューです。

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