時代のはざまにSG Special

Gibson SGは60年代の発売から今日まで、多彩なバリエーションを生み出してきた歴史の生き証人のようなモデルだ。そんなSGシリーズの中から、筆者にとって思い出深い、ハードロック時代のはざまに生きた70年代のSG Specialを紹介したい。

Gibsonソリッドギターの歴史を背負い続けたSGモデル

SGほど長くGibson社のソリッドギターの歴史を背負い続けた機種は無いだろう。個人的な話題で恐縮だが、今回取り上げるSG Specialは、そんなSG好きの私にとって実に想い出深いモデルなので、詳細を紹介したい。

SG StandardとSG Special

中学時代に手に入れたGibson SG Standard 73年モデルには、ワイドトラベル・チューンオーマチックと命名された進化系パーツが搭載されていて、60年代っぽいシングルピックガードなのに妙にモダンな印象を受けるデザインだった。その直前までスリムなABR-1が搭載されていたのは、カタログを見れば一目瞭然だ。

しかし、よく見ると、このカタログの写真、StandardがワイドトラベルでSpecialはABR-1になっている。説明文には「双方ともにワイドトラベル」とあるので、Specialの写真はちょっと古いものを拝借したのがわかる。関西ハードロックの聖地「バハマ」を起点に活躍した「Piledriver」のギタリスト「安田和史」が愛用したのが、このSG Specialだった。

私にはカタログ通りのABR-1を搭載した彼のSpecialが、ちょっぴりヴィンテージっぽく思え、60年代の雰囲気を感じとって羨ましかった。

普通Specialはポジションマークがドットなので、この画像のようなブロックインレイは、どちらかといえばStandardのイメージがある。

「安田和史のSG Special」は、その後DimarzioのPAF & Super Distortionに改造され、後年は私の手元にやってくるのだが、今回は別個体・同スペックのフルオリジナルを手に入れたので詳細を見ていきたい。

チェリーレッドの退色

この年代のチェリーレッド(安田君のSG SpecialはWalnut Color)は、60年代に比して赤の退色が顕著だ。

パーツを外してみると真っ赤なチェリーがそのまま残っていて、いかに当初の色が変色したか手に取るようにわかる。

まるで赤いピックガードを搭載しているようだ。

日光のあたる店頭にギターの表を向けて長時間ディスプレイされていると、表と裏の色がこんなに違ってしまう。

特別仕立てのピックアップリング

このモデルのミニハムは廉価版を連想させるプラスチック製だが、中身はLes Paul Deluxeなどと同様の仕様なのだろう。

裏から見ると違和感がない。

ピックアップリングはP-90などと互換性のない、このモデル専用の金型で成型されている。

フロント・リアともにスラントしていて、ギブソンがパーツに手を抜かないポリシーであることが良くわかる。この点はリスペクトできよう。

しかし特別仕立てのスラント・ピックアップリングはフロントとリアに互換性がない。デザイン的には随分と贅沢だが、ツアー中に割れたらどうやって修理するのだろう…と心配になる。

芸が細かいパーツのチョイス

スタッドボルトはニッケルなのにショートだ。

そしてスイッチプレートは「R」が垂れているヴィンテージタイプ。これはうれしい。

ヘッドストックのKluson Deluxeペグは、つまみがFlying V同様のトライアングル・メタルであるが、SpecialというよりはStandardのスペックだ。

一応差をつけるためにブッシュがハトメになっているのは芸が細かい。このあたりで価格差を正当化しようとしたのかな。

ロッドカバーは1プライでチープ。ピックガードもチープ。

すだれ模様が入ったABR-1のサドル

最後にテールピースとブリッジ。

ABR-1はファウンダリーマークのないPatナンバー品だが、しっかりとすだれ入りのブラスサドル。

ハードロック時代のはざまに生きた70年代のSG Special

Gibsonは、なぜSGシリーズにいつも中途半端なDeluxeやSpecial、Pro Deluxeなどをラインナップするのか。誰も説明してくれないうちにどんどん枝分かれして、この後はとりとめのないシリーズが矢継ぎ早に登場するのである。

いつの時代もGibsonを代表するモデルでありながら常に迷走と逆走を繰り返すSGにあって、ABR-1を搭載したヴィンテージフィールあふれるこの70年代のSpecialは、ハードロック時代のはざまに生きた感じがしている。

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