Dead Stockという遺物 - アメリカのヴィンテージ・ギターショー
ナッシュビルのギターショーで山ほどのギブソンパーツを持参した出展者がいました。彼はギブソン工場の物流部門のマネージャーで「カラマズー工場から輸送してきたパーツの引き取り手を探している」というのです。
1989年に渡米して、南部の田舎町「Greenwood(S.C.)」でコツコツと駐在業務をこなす日々の私に、アメリカのカルチャーとロックとモノづくりを感じさせてくれたのが、ヴィンテージ・ギターショーでした。そのころは毎月一回は大きなショーがいろんな都市で開催されていて、有名なものはテキサスギターショーから、小さいものだとアトランタ郊外のシビックセンターを借りた会場まで、さまざまな規模で楽しめたのです。
意外かもしれませんが、60年代のSGや70年代のフライングVはヴィンテージというよりも中古扱いで、おおよそ700~900ドルぐらい出せば、オリジナルハードケース付属のコンディションが良いものをオーナーから譲ってもらうことができました。岩撫安彦氏がPlayer Magazineでレポートしていた風景そのものに、貴重なギターが所狭しと並んでいたのです。
その中でも思い出深いのが、ナッシュビルで開催された中規模のショーです。
ハンドメイドのエレクトリックギターから戦前のマーチンまで、幅広いジャンルの楽器に混じって、山ほどのギブソンパーツを持参した出展者がいました。彼はギブソンのナッシュビル工場でS/H Division(物流部門)のマネージャーをしている人物で、いろいろ話をしながら仲良くなると、「カラマズー工場から輸送してきたパーツで、ナッシュビル工場では使わないものが、コンテナ6本分あるんだ。引き取り手を探している」と言うのです。たしかに彼が出しているブースのテーブルには、60年代のニッケルパーツや、配線、作りかけのネックなどが並べられていて、12ドル、66ドル、295ドルなど根拠のないプライスタグがつけられていました。あまり価値には頓着していなかったのでしょう。
私は彼の持っている写真を見て、その内容に狂喜しました。一緒にいたクロフォード・ホワイト(ナッシュビルを本拠としたインディペンデント・ブローカー)も同様です。作りかけのネックやボディのテンプレート、ピックアップと思しきハードウェアの数々。中にはミシガンのナンバープレートまで入っています。
詳細は彼もわからないとのことですから、一応ギャンブルですね。1011から1016までの番号がふられたコンテナを、「中身はそれぞれ違うけど、まあ1本7,000ドルでどうか?」というのです。しっかりとした在庫リストもないままに、私が4本、クロフォードが2本買うことを決めて、コンテナを保管するヤードも地元のトラック業者と契約しました。中身は出たとこ勝負です。もちろん7,000ドルをかなり価格交渉して下げてもらいました。
次回(ヴィンテージ・ギブソンのピックアップ・デッドストックパーツ)より、コンテナに入っていたパーツの中から未使用のダブルスタンドワイヤー、ピックアップ、ピックアップカバー、未メッキのベース用フェンス、ストラップピン、フレットなどを前後編に分けてご紹介します。
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