ヘッドに輝くクラウンを語る

SGマニアにとっては結構気になる「王冠マーク」ですが、形状が複数あるのをご存知でしょうか? 今回は、あまり凝視することのないクラウンインレイのシェイプと位置の違いを見ていきます。

結構気になる「王冠マーク」

レスポール・ファンには、あまり馴染みのないヘッドストックの「王冠マーク」。でも、SGマニアにとっては結構気になるデザインというかシェイプなんです。みなさん、どの時代のどのモデルも、大差なく同じような形の「王冠マーク」がつけられていると思っていませんか? 私は、随分と長い間「シェイプの違い」に気づかずに過ごしていました。

ベースにもギターにも、ソリッドにもセミアコにも、あらゆる時代のいろんなモデルに登場する「クラウンインレイ」は、初めて手に入れたギブソンがSG Standardだった私にとって、Gibsonロゴとペアといっても過言ではないほど見慣れていたはず。

これが、見慣れた70年代のクラウンです。末広がりの扇型が何ともいえず、バランスが良いでしょ?

ガイドラインを引いてみると、完成されたデザインの美しさが際立ちます。

ところが、アッパーリンクオーに搭載されたクラウンは、左右の角が随分と短くなっています。

角の切れ込みの長さも浅くなりました。左右でこんなに異なるシェイプですが、遠目に見ると、何事もなかったように同一な印象を受けるのが、デザインの魔法というか錯覚というか。

横並びで比較すると、なんとなくわかりやすいのですが…。

4種類のクラウン

手元にある「突き板」と「インレイ」をチェックしてみたところ、とりあえず4種類確認できました。

わかりますでしょうか。

8個で丸い円を描いているので、一個の角度は45度になります。これは、どの時代のクラウンインレイでも同じでした。

SG Standard解体新書 Part Ⅱでご紹介した3本のSGもクラウンインレイが異なっていますので、参照してみてください。

クラウンインレイの位置

さて、クラウンインレイには、もう一点「年代によって位置が異なる」という特長があります。

LPがLPSGと呼ばれるボディデザイン変更された60年初期は、2弦5弦のペグよりも上の位置にレイアウトされていますね。一方で、60年中期以降でしょうか、位置が大幅に変更されて、2弦5弦穴と同じぐらいの場所になりました。これなんか、随分と下に落ちてきています。

混沌としているマスキングロゴの時代

そして、マスキングロゴの時代は、左右の角に切れ込みさえもありませんから、シェイプは混沌としてきます。

マスキングシールには、かろうじて王冠の切れ込みはありますが、Gibsonの「i」のドットがありません。こんなんで良かったんでしょうか。

この頃は、突き板にペグ穴は開いていませんから、ギターもベースも共通です。EBのクラウンインレイを見てみましょう。

ギターと共通ですね。

エピフォンのゾウリムシ

65年前後には、クラウンインレイが施されたLes Paul Standard GTが出荷されていますが、特殊な例を除けば、凝視することのない「王冠マーク」、いかがでしたでしょうか。ESシリーズでも、しっかりとSGと共通のシェイプです。

余談になりますが、同時期にカラマズー工場で製造されていたエピフォンには、王冠ではなくて、何かよくわからない形状のインレイが施されています。(私は勝手に「ゾウリムシ」って呼んでいます)ブランドの象徴であるヘッドストックのど真ん中に鎮座する意味深なマークは、こうして時代を超えて「謎」を提示しつづけるのでした。

追)今回の撮影でひっぱりだしてきたEBですが、ひっくり返して、よく見たらボディがセンター2ピースでした。SGでは見たことあったけど…。

ギブソンのヴィンテージ・ロゴと突き板の変遷

今回はHeadstock Veneer(突き板を英語でVeneerと表現します)に搭載された状態のロ…

2015.05.09

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