レスポール・ジュニアSG エレキギター黎明期のヴィンテージサウンド

レスポールSGシリーズの中でもっとも生産台数が多い普及クラスのジュニアですが、随所にギブソンの丁寧な楽器作りがみられ、贅沢な素材とともにヴィンテージサウンドを珠玉のものとした当時のエレクトリックギター黎明期を実感できます。

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製造に手間のかかるメイプルトップのレスポールを60年にディスコンしたギブソン社は、新たな主力モデルとしてデザインしたソリッドボディ・エレクトリックギターを市場投入します。重量は軽めで、この記事で紹介している個体で約2.5kgと、レスポールから比較して4割軽いです。

レスポール・ジュニアSGのヘッドまわり

ヘッドストックには「Les Paul」の文字がシルクスクリーンで印刷されています。50年代と共通ですね。レスポール・ジュニアの場合、Gibsonロゴもゴールドのシルクスクリーンですので、ヘッドまわりはすっきりしています。

ペグはクルーソンの3連です。

1~3弦と4~6弦のそれぞれ3つのシャーシが1枚のベースプレートに搭載されています。3連タイプのペグは生産性は良いでしょうが、1個壊れると3個分のユニットを載せ替える事になり、メンテナンス適正は悪いです。

ペグポストはヴィンテージギター・ファンの間でも人気のブラスポストで、古くなるとこのように茶褐色に錆びてきます。

実用上は問題ありません。ツマミは樹脂製の丸ボタンですが、硬くなったペグを無理に回すと割れたり空回りするようになってしまいます。

レスポール・ジュニアの場合、削り出しのメタルブッシュではなく、プレスの安価なハトメ形状が採用されており、弦交換の際に油断しているとポロリと脱落して紛失してしまいます。他のパーツ同様に、このブッシュにもニッケルとクロームがあり60年代の中期に入れ替わります。本器は60年代初期ですのでニッケルがついています。

参考までにクロームのブッシュも掲載しておきます。

ペグを固定しているネジは、溝切りが足の途中までしかきていないタイプが本来の形状ですが、このペグに使われていたネジは頭までしっかりと溝切りしてありました。

トラスロッドカバーはブラックの1プライです。スタンダードやカスタムの2プライ・ロッドカバーと比べると見るからにシンプルな作りです。トラスロッドの仕込みやナットの形状は、他のギブソン製ギターと共通のスペックになっており、ロッドカバーのスクリューも共通パーツです。カバーを外すと、見慣れたロッド調整ナットが頭を出します。ここは長年のダストなどがたまりやすい場所ですね。

ナットは50年代のレスポール同様、デルリンの若干透明感がある素材が使われています。

ヘッド裏のシリアルは、すでにインクスタンプから刻印に移行していました。

60年代ギブソンの高度なインダストリアル・デザイン

きれいな木目の出ているハカランダ指板は魅力的なスペックです。指板を端から見ていきましょう。ストレートな木目のハカランダも高級感があって素敵ですが、このようにウネウネした柄もかっこいいですね。同時期のメロディーメーカーなどにも同様のハカランダがふんだんに使用されています。ネックは綺麗なホンジュラスマホガニーの1Pです。

ネックジョイントは、かなりボディ側に入り込んだ強固なボックス型で、きれいな段差にきちんとネックの付け根が仕込まれています。

塗装にウェザークラックが溜まらないほど強度が均一に仕上げられているのですから、当時の贅沢な木材セレクションとセッティングのセンスが量産工業製品と手工のハーモニーともいえそうです。

ジョイントに覆いかぶさって加工部分を隠すように曲線を描くピックガードは、60年代ギブソンのインダストリアル・デザインのレベルの高さを証明しています。

ピックガードを留めるネジの数も最低限に抑えられています。

ドッグイヤータイプのP-90ピックアップ

ギターの心臓部、ピックアップはドッグイヤータイプのP-90を1基搭載しています。ちなみにドッグイヤーという名称は“読みかけの本のページの角を折る”形状が由来です。

このカバーは左右2本のネジでボディーに留められているシンプルな構造で、本体の耳部分でボディトップからぶら下がるようになっています。

ポールピース、マグネットともにPAF直系のパーツで、60年代初期だとロングマグネットが2枚搭載されていることもありますので、この時期のP-90においてはポテンシャルの高さが想像できます。

テールピース・ブリッジとコントロール部

テールピースはブリッジと一体型のコンペンセイテッド(ニッケル)で、ロングスタッドボルトとのコンビネーションがタイトなヴァイブレーションを余すところなく伝える仕組みです。3弦がプレーンの現代においては、このブリッジではオクターブピッチの調整が難しく、現行のヒストリックコレクションなどに搭載されている「ライトニングバー・ブリッジ」の方が実用的なようです。

1×Volume,1×Toneのシンプルなコントロールです。ノブはブラック・リフレクターで、数字のフォントが50年代と共通しています。ポインターは90°で、これも50年代スペックですね。

コントロールキャビティを覗くと、加工が後年とくらべて非常にタイトなのがわかります。手が込んでいますね。コンデンサはすでにバンブルビー/ブラックビューティーではなく、小さなものに移行しています。

P-90ピックアップ搭載モデルの紹介は不定期で続きます

レスポールSGシリーズにおいてはもっとも生産台数の多い普及クラスのジュニアですが、随所にギブソンの丁寧な楽器作りがみられ、贅沢な素材とともにヴィンテージサウンドを珠玉のものとした当時のエレクトリックギター黎明期を実感できるのです。近年ではギブソン社のマホガニーがどんどん肌色っぽくなっていますが、このジュニアのようにチェリーのフィニッシュが剥げた部分に覗く焦げ茶色のマホガニーこそが、ヴィンテージ・ギブソンの一端を担っているといえるでしょう。

今回はドッグイヤータイプのP-90を搭載したレスポール・ジュニアSGを紹介しました。今後もシリーズとして、その実力とユーティリティの広さで人気があるP-90を搭載したモデルを紹介していきたいと思います。P-90はES-330のようなホロウボディからSGジュニア/スペシャル、ファイヤーバードのようなソリッドボディまで幅広く採用されていますので、みなさんも直接触れたことのある身近なサウンドだと思います。構造的には同年代のハムバッカーと同じマグネットが1基につき2枚搭載されているのですから贅沢なつくりですね。

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