おったまげのカタログは、未知との遭遇 その3

「おったまげ」なGibsonのカタログを紹介するシリーズの第3回。第2回に引き続き、カタログの中から思い入れの深い5機種ランキングの第1位と2位を発表いたします。

第2位 Flying V Ⅱ

汎用性の無いパーツを搭載している点では群を抜く「Flying V Ⅱ」は、デザイナーが拘りにこだわったVシェイプのブラックカバード・ピックアップ、ブーメラン・ハムバッカーを2基搭載。さらに勢い余ってテールピースまでもブーメランシェイプになっています。このピックアップが曲者で、裏はエポキシ樹脂でがっちりと固められているため、中で断線するとアウト。リペアのやりようがありません。交換するにも該当するパーツは無いですし、ピックアップリングもブーメランなので、普通の四角いピックアップは搭載できません…。さらにプレイアビリティをまったく無視した指板エンド。これでは2弦の22Fはチョーキングできないし、3弦の22Fは押さえることすらできません。

ギブソン社内で、デザイン部門がこれを提案してきたとき、反対する人がいなかったのでしょうか。しかも価格が凄いです。478,000円は、当時のSG Standard 2本分。ステージで弾いている人をほとんど知らない、隠れた「迷機」です。ポピュラーにならなかっただけに批判にもさらされず。詳しくはVintage Maniacsの記事「 フライングV2 - アレンビックに対抗するポストモダンのニューモデル」をご参照ください。

80年代はギブソンにとって、フライングVが日の目を浴びた輝かしい時代だったのでしょう。従来のマホガニーボディ・マホガニーネックに飽き足らず、アレンビックを意識したマルチプライや、Dean、Hamerに対抗すべくフレイムメイプルを採用したThe Vなど、絢爛豪華なラインナップを誇っていたのです。

The Vはダブルブロンドのダーティーフィンガーズがサンバーストに映えますね。そして、フライングVには、この時代だけのベースもありました。

第1位 Les Paul Pro Deluxe

栄えある第一位は、見た目には68モデルなのに、わざわざ「Standard 58」とか、わかりやすい型番にせず、あくまで「デラックスにP-90を載せました」的な中途半端な企画を誇張した、Pro Deluxeです。これがメイプルネックではなくマホガニーなら「68リイシュー」として、さぞかしギタリストからは受け入れられたのではないかと…。でも実際に弾いてみると、メイプルネックと重いマホガニーボディの組み合わせがP-90と絶妙にマッチしていて、ファイヤーバードⅦっぽいドライブ感のある音色なのです。エボニー指板というのも、なぜかスタンダードをわざわざ回避している印象ですね。4kg超えの個体が多いのが難点ですが…。

同じカタログに掲載されているマホガニーネックのHeritageシリーズが、ヴィンテージ復刻ブームの火付け役となるのを横目に…

スタンダードモデルをはじめ、ギブソンはメイプルネック仕様のレスポールを生産しつづけるのでした。

デラックスには従来どおりミニハムバッカー搭載モデルも用意されていましたし…

カスタムに加えて、アクティヴ回路搭載のArtisanなど、多彩なバリエーションを維持しています。

第6位以下のモデル

さて、いかがでしたでしょうか。フルアコとアコギのページは別の機会にご紹介するとして、6位以下にランキングされたモデルもご紹介しておきましょう。

The Vのいとこにあたる、Firebird Ⅱ。これでファイヤーバードは、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅶの5モデルに増えた(笑)
一見してHamerに見えますね、The Explorer、そしてちゃんとExplorer Ⅱも作っちゃってます。ここまでくれば、The ModerneとModerne Ⅱを企画してほしい。
SGがStandardの1モデルだけになってしまっていて、寂しい…。
RD Artist 79の「79」って何だろう…。
KISS御用達Ripperの型番がL-9Sだったって、初めて気が付いた。でも、これって3モデル別々のネーミングにする必要があったのだろうか。私がマーケティング部門長なら、Ripper Custom、Standard、Jrにするけどなあ…。

 次に読むなら

おったまげのカタログは、未知との遭遇 その1
「おったまげ」なGibsonのカタログを紹介するシリーズの第1回。英文と日本文がマッチしていない説明文や、ヘンテコで無責任(笑)な解説など、80年代の日米のカタログを見ていきます。

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