アッパーリンク・オーって、知ってるかい? その3
全3回シリーズでお届けする「アッパーリンク・オー」特集の最終回はゴールドトップに注目。80年代を主張するスペックと超一級の素材で、その後のヒスコレにつながる「黎明期」を堪能させてくれる名器です。
超一級の素材が使われたゴールドトップ
VMシリーズ第3弾、ゴールドトップの登場ですね。
FVこのギターはヒストリックコレクションが登場する直前で、スペック的にもボディ・ネック・指板、どれをとっても超一級の素材が使われているよ。
VMまさに黎明期ですね。
FV時期的にも56リイシューはめずらしくて、コレクターの人も注目している個体だ。1988年にShowcase Editionとして限定発売された、ピックガードに「Les Paul」の サインが印刷されたバージョンがあったけど、ピックアップがP-90、ブリッジはABR-1だった。
VMこれは、資料ではピックアップがP-100ってことになっています。
FVノイズは少ないんだろう。好きずきだな。特長的なのは、カッタウェイのバインディングが太いこと。なかなか真似できないルックスだ。
VMまえから思っていたんですが、バインディングの面倒臭さからいえば、このほうが絶対ヒスコレよりも手が掛かってますよね。
FVそりゃそうだね。そもそも、どうやって貼り付けているんだか、製造工程みないとわからんよ。もともと全部が太いバインディングをフラットに貼って、トップに合わせて削って細い部分を作ってるのかなあ。
VM環境にやさしくないですね、捨てる部分が多くて。
FV……。
VMじゃあ、個々のパーツを見ていきましょう。
FV「やみクロ」っぽくいこうか。
VMギブソンは、このカタログにあるような「Deluxe」にP-100を搭載して、山野楽器さん向けにJapan Limitedとして輸出したんでしょうか。
FVそれぐらいの、いい加減な商品企画だった時期だね。工場のクオリティに反して、マーケティング部門は、新しいデザインとヴィンテージリイシューが混在して、市場ごとに受け入れられ方が違っていたようだから苦労はわかるけど。まあ、安易だな。
VMファイヤーバードⅠとかの山野楽器Limitedは企画がGoodだと思ったんですけど。
FVよく見ると、ペグは、そもそもGroverじゃないね。
VMあ、ほんとだ。Schallerですね?
FV余談だけど、このペグ、すぐに壊れる。
VMあー、僕のもいくつか壊れてます。同じです、カパカパになって取れちゃって。
FVペグを1個だけって、なかなか買えないから気を遣うよね。丁寧に扱っても取れるときは一瞬だ。「あ~~~」って。
VMカバーをベースプレートに留めている2か所のカシメ、絶対に構造的不良、強度ミスですよ。
FV同感。よくリコールにならなかったね。
特徴的なスペックとパーツ
VM基本的にはHeritage 80のゴールドトップや、30thアニバーサリーと同じ匂いのするギターだと思うんですが、どのあたりが注目ポイントですか?
FVまあ、何といっても今回のシリーズのテーマでもある「アッパーリンク・オー」のロゴだろう。時代がひと目でわかるという意味で貴重だね。90年代に入ると、ヴィンテージっぽいオープン・オーが復刻されてレギュラーモデルにも搭載されはじめるので、見た目で「おっ」というのは減った感じがする。
VM僕が懐かしいのは、ゴールドのカラーリングがチープなバレルノブです。安物っぽさが、後年にはない80年代独特というか。
FV貴重だね。しかも、ほぼ必ず「ヒビ」が入っていないかい?
VMキャビティ内も、メタルプレート上にポットが搭載されていて懐かしい匂いがします。製造工程の合理化なんでしょう。あらかじめアッセンブリーしておいて、一度で「えいやっ」って取り付ける。
FV配線とかキャパシターとか、もう少しなんとかならないかなあ…。
VMギター本体が秀逸なので、ちょびっと残念ですね。
FVこの年代のモデルが、ハイクオリティなのにマニアから見逃されていた理由かもしれないよ。
VMいまでは、むちゃくちゃ高騰していて、見つけても衝動買いできません。
FVとにかくマホガニーが良質だ。
VM本来こういう色ですよね、マホガニーって。
FVキャビティからピックアップに延びるミゾはタイトに掘られている。
VMスカスカのミゾのバージョンは、北米では「ネズミが通れる」とか揶揄されていましたが…。
FV確かに、このモデルのミゾはタイトだ。でも、ビニールワイヤーは見た目が良くないなあ。
VMこの年代のモデルが、ハイクオリティなのにマニアから見逃されてきた原因かもしれません。
FVそれ、さっき私が言ったセリフだよ。
VMプラスチックパーツは、割れたり失くしたりすると取り返しがつかないですね。
FVそうそう、成型パーツだから。ヒスコレなら「似た素材から切り出してもらう」ことも出来るし、アフターマーケットのパーツも豊富だけど、さすがにこのジャックプレートとピックガードは無いだろ。
VMピックガードは、裏側の「おへそ」が目印です(笑) お忘れなく。
80年代ロックを謳歌する名器
FV今回は、アッパーリンク・オーのシリーズとして、さらりと紹介する予定だったんだけど、こうして眺めながらいじっていると、ほんとに丁寧に作られているよね。
VMフレットが上手いんですよ。工場の生産ラインなのに。あと、フレットがちょっと細目じゃないですか?
FVポジションマークの紋様も、後年にはない独特のパターンだね。たしかに、見ていると50年代回顧とは違った、元気のいい80年代ロックを謳歌するような作りになっていて、時代を反映している印象だ。
VMギブソンは、いつの時代も、それなりに真剣にギター作ってますよね。
FVやけに短いシャフトやクロームパーツが80年代を主張しているけど、このあとヒスコレにつながっていく「黎明期」を堪能させてくれる名器と言っておきたいね。
ギブソンのヴィンテージ・ロゴと突き板の変遷
今回はHeadstock Veneer(突き板を英語でVeneerと表現します)に搭載された状態のロ…
2015.05.09
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