SG Standard解体新書 Part Ⅱ - 中編
ピックアップキャビティ内で発見した、謎の「2つの穴」。フルオリジナルだからこそ、細かな部分に、いろいろな疑問が生じるのである。解体新書PartⅡの前編に続き、もう1本の3PUキャビティ仕様のSGを見ていこう。
目次
フルオリジナル故の疑問
同じギターでも、一人で眺めている時と、気の置けない仲間とワイワイやりながら見ている時では、随分と感じ方が違ってくる。とくに、何気ない雑談から「当然当たり前」と思っていた事が違っていたり、気が付いていなかったり。自分が気にしていない、ちょっとしたスペックの差を、友人は、心の底から拘っていたり。そして、思いもよらない新しい発見があるものだ。皆さんも経験があるだろう。
オリジナルオーナーからデッドミントの状態で購入したこのギターは、ハードケースも、タグも、レシートも、ネジ一本までが、店頭で販売された当時の姿を遺している。
だから、何事も付け入る余地がなく「フルオリジナル」であり、だからこそ「細かな部分に、いろいろな疑問が生じる」のである。
一緒に撮影を手伝ってくれていたVM君が「なんすかね、これ!」と驚いた。そして私も「おおおお」である。二人で声を揃えて「新発見」だ!
ピックアップキャビティの「不思議な穴」
この個体が40年間ガンガン弾かれて、パーツが交換されて、リフレットされたりPU交換されていたら、「二つの穴」を見つけたオーナーは「ネックをリジョイントしたのかな?」と思うかもしれない。そう思っても仕方ない、不思議な穴である。
よくよく思えば、昔テキサスのギターショーで手に入れたSGにもこんな加工跡があった。いままで忘れていたし、「ちょっとした強度補強」程度にしか気にとめていなかったが、ファクトリーオリジナルだとすると、「私としたことが…」と語るほど偉くはないが、「私としたことが…」である。なんの目的で掘られた穴だろう。
ピックアップキャビティは、エレベーションスクリューが収まる「掘り込み」が、随分と大きくなった。
オープンオーの個体と比較すると歴然である。
しかし、Standardは2PUだから、ミドルピックアップ用キャビティの左右には、この掘り込みがない。このあたりの「ひと癖」が、カラマズー工場である。(理由は無いが、何となく感覚的に…笑)
【スペックチェック】3PUキャビティ仕様(2本目)
ヘッドのロゴは、クローズドオーの角ばったバージョン。この後、長期にわたり「丸いクローズドオー」と「アッパーリンクオー」が併用される、なじみの深いシェイプだ。
裏側にはしっかりと「ボリュート」が設けられているから、ロゴと合わせて判断しても、前編の個体よりも後年のスペックとなる。
ネックジョイントからは、ノッペリした長いでっぱりがなくなって、60年代初期のようなスマートな加工がなされている。
私は長年、「ジョイントヒールが長いほうが後期、短いほうが前期」と思っていたのだが、どうやら「ショート」→「ロング」→「ショート」という具合に、行ったり来たりするようだ。ポットデイトを確認しようとしたが、これまた「ハンダと白い粉」に阻まれて見えない。
SGは生産台数が多い分、パーツの年式が前後する。50年代仕様のレフトオーバーパーツが多用されている個体もあれば、すべてがクロームの新バージョンに移行している場合もあるので、パーツスペックだけで工場生産年度を割り出すのは無理があるというのが通説である。私も同感だ。
しっかりとDJマークの入ったクロームABR-1には、エッジが少しだけ面取りされたサドルスクリューが搭載されていて、樹脂サドルとともにフルオリジナルである。
ピックガードは、ちょうど前編の個体に搭載されていた5プライをひっくり返したように、上のホワイトレイヤーが太くなっている。ファクトリーで、切り出しの際に、単に裏表を間違えたか? いずれにしても、後年の5プライとはレイヤー毎の厚みが違っているので、一目瞭然である。
引き続きピックガードのサイズとネジ穴は変化がないので、80年代のピックガードでも、無改造でヴィンテージに搭載できる場合が多い。
ピックガードを仮止めして、このアングルで見てみると、PUエレベーションスクリュー用の掘り込みが随分と大きいのがわかるだろう。
ポジションマークの素材は3本とも同じだ。
スイッチプレートとワッシャーは50年代後期から続くヴィンテージのものが搭載されているので、コレクターとしては嬉しい。
そのほかのパーツもクローズアップしておくので、ぜひご自身でも年代を考察してみてほしい。
ここまで、3ピックアップ用にキャビティ加工された個体を2本見てきたが、後編では、コレクターに最も人気がある「2PUキャビティ仕様」のスタンダードを紹介します。
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