俺スキ - 70年代回顧 Japan Limited Flying V 前編

以前紹介した、ジャパンリミテッドのフライングVに再び注目。ギターに付属しているギブソンの品質検査証を読み解きながら、Kirk HammettモデルとJapan Limitedの関係を考察します。またテールピース裏の刻印にある「Advaned Plating Inc.」という企業についてもご紹介します。

ギブソンの品質検査証(型番)の読み方

VMチューンナップ企画「 メダリオンVふたたび - ボリュート付きのJapan Limited」で、限定生産のフライングVを紹介しました。

FVあの時はレギュラーモデルの67V、Japan Limited、メダリオン改の3本を比較して紹介したけど、とくにLimitedにすごく反響があったので、あらためてスペックを見ておこうか。

VMハードケースのハンドルにも、発見があったそうですね。

FVそれは、後編でちょこっと紹介するよ。

VMまず、正式な型番ですが…相変わらず「手書き文字が読めない」保証書です。あ、保証書じゃなくてインスペクションシート(品質検査証)か。

FV「DSVJCWCH3」?

VMたとえば「LPSTDTHSCH1」は「Les Paul Standard Heritage Sunburst Cherry」らしいです。「LPC3HSCH1」は「Les Paul Classic 3PU Heritage Cherry Sunburst Chrome Hardwear 1回目の品質検査でパス」という説明もありました。

FVでも、Japan Limited Flying VのWhiteだよね、これは。「DSV」の読み方で合っているのかな? JCWCHは、Japan Classic White Chrome Hardwareってことか。で、最後の「3」は、品質検査3回目で合格って…。

VM自分のギターが品質検査一発合格じゃなかったら、なんとなく嫌ですね(笑) えっと、じゃあ「DSV」のVはFlying Vの「V」でいいんでしょうか。

FV……。

FV一台ずつ写真撮影をして検査証に付けてくれるのは有難いけれど、飲みかけのペットボトルくらいどけてほしいよね。

VMさっきの質問をスキップしないでくださいよ。でも、細かい事を気にしてたらアメリカで暮らせませんから。

FVあ、そうか。帰国子女の君が言うんだから、そうなんだろうけど。

Kirk HammettモデルとJapan Limitedの関係

VM80年代とならべてみても、直観的にボディシェイプやヘッドストックの雰囲気を踏襲していて、完成度が高いですよね。

FVそうだね。パーツの細かいところを除けば良い線いってる。とくにネックジョイントの指板部分の段差とかね。前回も指摘したように、ここはすごくポイントが高いよ。

VMこれって、わざわざネックの部分をJapan Limited用にスペック変えて作ったとは思えないぐらいの特別仕様なんですが…。もしかしたら、もともと全然違うLimited Modelを流用したんじゃないですか? そういえば、このJapan Limitedモデルの前に、黒いフライングVのエイジドを発売してましたよね。

FVよく覚えているね。Kirk Hammettモデルだ。100万円近かったかな。公式シリアルは「HammettXXX(100本限定で3桁)」だけど、実は工場内のModel Numberは、DSVはじまりなんだよ。

VMそれって、怪しい情報じゃないでしょうね(笑)

FVDave Rogersに直接聞いてもらったんだよ。Gibsonが勘違いしていなければ、フライングVはレギュラーも限定モデルもDSVだって。レギュラーはDSVR、Japan LimitedはDSVJ。あ、いま追加情報が。DSはDesigner Series。

VM知ってる人いるんですね。じゃあ、エクスプローラーはDSXかな?

ボディ塗装とパーツをチェック

VMキャビティとかはどうですか?

FVオリジナルとくらべると、ピックアップキャビティの左右の足が入る部分なんかは丁寧すぎるから、もうちょっとラフな感じの加工でもいいね。チューンナップで手を入れたくなる。

VMでも、このJapan Limitedが、そもそもKirk Hammettモデルの残りだったなんて、もしそうだとすると、想像するだけでもワクワクしますよ。

FVそう思わせるだけのクオリティーがあるね。ピックアップは57クラシックを2基搭載。Gibson Japanは、これをいくらで販売したかったのかね。

VM最後は特価で10万円を下回る売価をネットでみかけました。ハードケース付き。

FV買った人は、大事にすると良いよ。

VM塗装をチェックすると、この個体はもとからClassic Whiteですね。

FVめずらしく縦にクラックが入って、薄い塗装ならではだ。

VMネックまわりにも、ビシビシとクラックが入っています。

FVパーツを見ておこうか。

FVこのナッシュビルタイプのブリッジが曲者で、Germany時代とくらべると、随分と形状が異なる印象を受ける。

「Advaned Plating Inc.」という会社

FVそして何といっても、テールピースの裏の刻印が特徴的で、「Advanced Plating Inc.」の表記。

VMFVさんのことだから、Advaned Plating Inc.って会社、調べたんでしょ? ギターパーツの会社ですか?

FVっていうか、もともとAdvaned Plating Inc.は、自動車のクロームパーツをレストアする腕利きのチューナーだ。テネシー州Old HickoryでElton Coleさんが60年代に創設したんだけど、すぐにギャンブルで会社を手放してるね(笑) その後80年代に入って、Steve TracyとMike Archboldがデイトナビーチのバイクイベントで意気投合して(このあたりがアメリカっぽい)ナッシュビルで会社を大きくした。そのサイドビジネスだった「ギターパーツ部門」が独立したのが「Advanced Music Proucts」だよ。

VMナッシュビルって、町全体が音楽で溢れていて、老若男女問わず、弦楽器との係わりがありそうですよね。

FVAdvanced Plating Inc.のホームページ を見ていると、古き良き時代を継承するアメリカの製造業を応援したくなるね。90年代後半に火災で工場が消失し、Cowan Courtというダウンタウンに移転して、そこで今度は99年にナッシュビル大洪水で水没。そして、直近の2018年に漏電で再度火災。「山あり谷あり」ならぬ「火あり水あり」。

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