100万円もって1989年にGO~! - タイムトラベル・シリーズ 第1回

インターネットも携帯もない時代の音楽雑誌の広告ページは、時間のゆったり流れる至福の窓口でした。このシリーズでは筆者が1989年から15年間ストックした資料とともに当時を振り返っていきます。第1回はコリーナ・シリーズにフォーカス!

音楽雑誌の広告ページでタイムトラベル

2021年9月の記事「さらにヘンテコなギブソン探訪」で、手元にある1989年から15年間ストックした音楽雑誌の広告ページを一部ご紹介しました。「見たい!」「貸してほしい」「調べてほしいギターがある」という、沢山の反響をいただき驚いています。

たしかに、当時は日本全国にヴィンテージギターを扱うショップが沢山ありましたから、広告の写真だけでも相当な情報量がつまっています。

「Vol.1 1989~1990」をぺらぺらとめくっていると、30年前の日々が昨日のことのように脳裏にうかび、忙しかった会社員生活がどれだけ「Gibson」という記号によって支えられてきたかを想い出すのです。疲れて独身寮に帰ってきて、缶ジュースを飲みながら広げた音楽雑誌の広告ページは、インターネットも携帯もない時代のゆったり流れる至福の窓口でした。

100万円もっていたら、どのギターを買うかな?

第1回では、広告に掲載されたコリーナ・シリーズのギターにフォーカスしながら、皆さんとタイムトラベルのひと時を過ごしましょう。

で、ただただ眺めているのも趣がないので「100万円もっていたら、どのギターを買うかな?」というお買い物企画です。1990年頃のEVANCE(当時は骨董通りにも店舗があったROLEXのショップ)の豪華なカタログを見ると、サブマリーナのベーシックなモデルが20万円前後と記載されていますので、現在の価値・価格と比較しながら換算してみてください。

まずは、コリーナのモダーン「14万円」の登場です。1987年に新品在庫処分価格(荒井貿易)で18万円でしたから、2年後の中古価格としては、ちょっと高いかもしれません。同じ号の別ページにはEXが26万円で掲出されています。

一方でFVはというと、だいたい同じ価格帯でしょうか。

3本並んでいると壮観ですね。

EXの20万円は、即電話で取り置きしたい魅力的なプライスだと思います。

FVは、このあたりがツボでしょう。

まずは、モダーンを買って14万円。そして、16万円のFVで合計30万円。EXは20万円のを手にいれて、合計50万円まできました。それでもまだまだ予算の2分の1です。EXは個体数が少ないこともあってか、モダーンやFVと比べるとちょっと高めかもしれません。

そのほかのFVを見てみましょう。

PRSのシグネチャーでFVが3本買える時代もあったとは……。あと、めずらしいブラックのFVも発見しました。

これ、21万円。買います、即決。お買い物合計が71万円になりました。そういえば、今だと消費税10%なので、100万円の買い物だと支出は110万円ですね。当然のように支払っている「消費税」ですが、1989年4月1日の導入当時には随分と混乱したものです。「3%」でスタートし、1997年には5%に、2014年には8%。そして現在は10%です。いつのまにか「国税の4割」を占める大型財源になっていますから、支払う消費者の私たちも、しっかりと有益な使い道であることを願いましょう。で、この広告掲出価格ですが、税別とも税込とも書かれていない過渡期なのです。3%だとあまり大差ないですが、今回の予算100万円は税別97万円の合計金額にしておこうと思います。

で、71万円まできましたので、残り26万円となりました。他のページもざっと見てみましょう。皆さんも「お、これ買いたい」というコリーナ・トリオが見つかりますように。

後記

VMいやあ、なかなか魅力的なタイムトラベル・ショッピングでしたねえ。僕は、ついついよそ見しちゃって、こんなギターが気になってますよ。

FV今回は「コリーナ・シリーズにフォーカスしたタイムトラベル」だったけど、確かにどれもが時代を背負ったすばらしいギター達だ。良いオーナーと出会って、いまでも現役でステージで活躍していたり、コレクションとして大切に保管されているんだろうね。私の寄り道は、この2本かな。

FVでも、残高26万円だと68GTが買えないな…。

VM消費税、微妙に効いてますね(笑) 当時はロックイン・タムタムに、よく行かれてたんですか?

FVうん。今村さんがZemaitis好きでね。あと、GibsonのFBとかFVとか、好きなギターの趣味が似ていたのかな。朝イチで電車のって中野でおりて、ギターハウス寄って、駅前で定食を食べて、午後はロックイン・タムタムだったな、ウイークエンドは。

VMそれはそうと、ちょっと気になってる広告ページがあるんですけど…。

FVどれ?

VMこれです。コリーナが3本載ってますが、どのコリーナがいくらなんですかね。

FVああ、これはね、前月号の広告を見ていればわかるよ。

FVほら、ここではFVとEXが248,000円だろ。だから、翌月にはモダーンが入荷しましたってことさ。

VM広告も連載っぽくて、見かたが変わりますね(微笑)

FVただ、当時は雑誌の編集もデジタルではなくて、アナログ写真をスキャンして色分解して、製版から刷版まで考えられないようなロングレンジだから、こうした広告が掲載された雑誌が書店に並ぶころには、すでにショップの店頭で売り切れていて…っていう。

VMとにかくイシバシ楽器で雑誌を手に入れたら、公園通りのサテンで広告チェックして、公衆電話から即電話する…という手筈ですね。

FV“くらもちふさこ”さんの漫画じゃないけれど、「いつもポケットに10円玉」を(笑)。広告にも、早い者勝ちって書いてある。

FV「白・黒・ナチュラル各1本!」

VMでも、振り返ると当時、こうしてヴィンテージギターに力を入れていたショップがあるから、こんにち大切なギターがしっかりと現存している印象があります。

FVそうだね。お店の人も一生懸命だったし。この時代に日本のヴィンテージギター業界で頑張った人達のパッションがなければ、これだけ沢山の良質なギターが遺ってこなかったよ。

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ギブソンが試行錯誤を繰り返す「ヘンテコ黄金期」のカタログをご紹介。特に今回はXPL Customにクローズアップして、当時の雑誌広告を見ていきます。

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