音の本棚 第4回 『The Guitar』という写真集 - 後編

音の本棚「音棚(オンダナ)」の第4回『The Guitar』の後編。ケン・ヘンズレーのフライングVをはじめ、ジョニー・ウインターのファイヤーバードやディッキー・ベッツのレスポールなどのページをご紹介。著者にとって想い出深い、WALのベースについても詳しく見ていきます。

ケン・ヘンズレーのフライングVとジョニー・ウインターのファイヤーバード

FV (Fukazawa Vintage Club)後編の今回は、フライングVの続きからだね。

VM (Vintage Maniacs)しかし、今の時代にこの改造をコリーナVにやったら、かなりいろんな意見をいただいちゃいそうですね。Twitterに載せてみますか?(笑)

FVそうだねえ、ストップテールピースだからね。改造する前に、他の選択肢とか無かったんだろうか、ケン・ヘンズレーさんご本人に聞いてみたい。

VMこれは松本さんのファイヤーバードを彷彿とさせます。

VMジョニー・ウインターさんは随分昔に、3:3ヘッドにチャレンジしてますね。「ネックが折れて、ギブソンで修理してもらった」みたいなことをインタビューで言ってましたが、むちゃくちゃかっこいいです。

FVおお、たしかに、TAK MATSUMOTOモデルの原型がここにある気がしてきた。

ボブ・マーリーのレスポール・スペシャル

VMTAK MATSUMOTOモデルで思い出しましたが、この写真集にはボブ・マーリーのレスポール・スペシャルが紹介されています。

FVカスタムショップでも復刻版を出してたね。

FV復刻版はボディのマホガニーが明るいので、オリジナルとはちょっと印象が違うけど。

ディッキー・ベッツとローリー・ワイズフィールドのレスポール

VMThe Guitarを観ていて羨ましいのは、掲載されているギタリストが普通にツアーやスタジオで59バーストを使っている点ですね。とにかく、自然にツアーに持ち出しています。

VMディッキー・ベッツさんは、ゴールドとバーストの二本立て。

FVウィッシュボーン・アッシュのローリー・ワイズフィールドも、ヴィンテージギターをツアーでガンガン使っていたね。日本公演では、メタルフロントのゼマイティスも使っていたし。ここで紹介されているのは、レスポール・スタンダードとリフィニッシュのストラト。

FVうっすら目立たないタマ目が、バイプレイヤーのローリーらしくてクールだ。あと、10ccの機材紹介のバリトラ・スタンダードは圧巻。いまなら、どれぐらいの値札が付くだろう。

VM想像したくないですね(笑) こういったギターは、今現在誰の手元にあるんでしょうか。

想い出深いWALのベース

FV私にとって想い出深いのは、パーシー・ジョーンズのベース「WAL」だな。この得体の知れない英国のブランドを、ポール・マッカートニーさんもパーシーさんも使っているとなると、大ファンの私としては、なんとしても手に入れたくなるわけだ。

VMWALっていうと、ラミネイトの豪華なボディが印象深いですが、ナチュラルもカッコいいです。ブランドとしては、1974年にイアン・ウオラーさんとピート・スティーヴンスさんが共同で立ち上げたハンドメイドブランドで、70年代後半からフルプロダクションのプロシリーズが登場。その後少しずつポピュラーになりましたね。80年代にウオラーさんが亡くなってからは、生産本数が極端に少ない時期が続いて、日本市場では谷口楽器さんが輸入していた時代を除き、ほとんどマーケットで見かける機会はありませんよ。

FVとにかく、この写真一枚に触発されて、英国で探し回ってもらったんだ。新聞広告に時々「売ります。WAL。450ポンド」とか出てるのを、ロンドンでミュージシャンやっている友人に頼んで個人売買で買ってもらって、空輸。全部FAXでやり取りしてたね。

VM90年代には、そのお友達に頼んで工場まで行ってもらってオーダーしてましたよね。何本持ってるんですか? これだって、貴重な本国のスタジオ写真で、カタログ用のオリジナルですよね。どこから手に入れたんですか?

FV作ってる本人からもらったんだよ(笑) まあ、当時はずーっと、ZemaitisとWALばかり追っかけてた時期だ。

復刻されないSGと森園勝敏さんのストラト

VMしかしFVさんも雑誌一冊で5時間も、良く話すネタがありますね(笑)

FVそこは、ロックギター回顧録みたいなものだから。深堀すると、もっと時間が欲しいよ。たとえば、このSG。これだって、すごく良いアイデアだから、いつかギブソンが復刻するだろうなって思ってはや、40年(笑) 誰も気にしてなかった。

VMそうそう、森園勝敏さんは、「LPBのストラトに外れなし」っておっしゃってましたけど、これはオーシャンターコイズかな、日焼けしたレイクプラシッドブルーかな。

VM四人囃子再結成のときにも、このストラトは健在でした。今は亡き佐久間さんのベースラインとのリズミカルな掛け合いが絶妙な「一触即発」のイントロは、日本のプログレッシヴロックを代表する、永遠のスタンダードですね。

参考(ギャラリーへのご投稿):Nabe - Vintage Maniacs Gallery

小さな世界のギター達

FV前後編でお送りした『The Guitar』だけど、このあとThe Guitarのコーナーは「Player誌」の人気グラビアとして長寿を誇り、ギターキッズを虜にしてきた。まさに、ギターは永遠の「愛するおもちゃ」だな。

VMそうですね。「おもちゃ」というと軽く聞こえますが、それぞれの想い出や苦労、青春、重ねた年齢など、すべてを沁み込ませた相棒ですかね。あ、「おもちゃ」で思い出した。この写真集には、ミニチュアのギターを作っている人が紹介されていましたね。

FVおお、覚えているよ。

FV写真だとなんか、おとぎの国に来たみたいだな。

FV私も、出会うたびに作り手と会話したりして、気が付いたら買っちゃうタイプなので、いろんな国のいろんな人がアプローチした「小さな世界のギター達」を集めてきたぞ。ニュージャージーからわざわざナッシュビルのギターショーに、この「テレキャスター」を持参してきたビルダーとは、結構会話が弾んだな。

FV80年代後半の作品だけど、当時は今ほど個人向けのコンピューター制御加工機とか、ましてや3Dプリンタなんか無いから、パーツもひとつひとつ丹精込めた手作りで、Life-sizeのギターを作るより時間かかっている気がしたね。

VMMikeが、「ブロンドの若い奥さんとデレデレ話し込んで買わされてた」って言ってましたけど。

FV否定しないよ。その通り。一度、こうしたハンドメイドのスモール・ギターを紹介しようか。

ユーライア・ヒープの創設メンバーである「ケン・ヘンズレー」は、キーボーディストとしての活動にとどまらず、ギタリストとしても多彩な音楽活動を展開しました。このThe Guitarで紹介されている、コリーナV、SGダブルネックや、バーカスベリー搭載のOvationなどには、彼独特のチューンナップ・アイデアが盛り込まれています。

プログレッシヴロック・ファンにとって、忘れがたい存在感のヘンズレー氏は、残念ながら2020年11月に、制作中のアルバム「My Book of Answers」をリリースすることなく他界されました。

R.I.P.

ケン・ヘンズレー - Wikipedia

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