白い恋人たち SGな週末 (後編)
前編のSG Customに続き、後編ではポラリスホワイトのSG Specialをご紹介。60年代の生産本数を見ると、ポラリスホワイトはチェリーに比べてかなり少ないのがわかります。貴重なカラーのSGをクローズアップで見ていきましょう。
目次
貴重なカラーのポラリスホワイト
前編の白いSG Customに続いて、後編では「ポラリスホワイト」のSG Specialを、クローズアップ画像も交えて見ていきましょう。
クロームのショートヴァイブローラを見ると、つい「エボニーブロック」を取り付けてみたくなるのは、私だけではないようです。ポール・マッカートニーのツアーでも来日したブライアン・レイさんも、エボニーブロック愛好家として有名ですね。最近ギブソン・カスタムショップからもアーティスト・モデルが発売されました。ヴィンテージに搭載してみると、こんな良い感じになります。一気に豪華さが増しますね。
そもそも、ポラリスホワイトというネーミングが随分と素敵なわけですが、チェリーと比べて、あまりお目にかからない気がします。60年代の生産本数を見てみましょう。
年 | Cherry | White |
1961 | 1,186 | - |
1962 | 959 | 377 |
1963 | 1,017 | 374 |
1964 | 1,704 | 318 |
1965 | 2,099 | 519 |
1966 | 1,841 | 29 |
1967 | 1,517 | 147 |
1968 | 1,269 | 192 |
1969 | 2,378 | - |
Cherryが13,970本生産されたのに対して、Whiteは1,956本と15%にも満たないので、印象通り、随分と貴重なカラーということになります。
ネックもヘッドストック(裏側)も、同じカラーで塗装されているので、斜めから見た「ブラックとホワイトのコントラスト」が、妙にモノクロームのモード系ファッションを連想させますね。
モノクロームという単語が出たので、ちょっと脱線して、白と黒のカラーリング、ファッションのお話を。私の時代的には、これはもうズバリ「川久保玲さんのコム・デ・ギャルソン」なんです。特に80年代に発表された「穴あきセーター」は、ヴィンテージギターの「ヤツれたボロボロの外観」に通じるカッコよさがあり、「手の届かない高級アパレルのショーウインドー」を随分と眺めたものでした。いまでも憧れのブランドです。
ギターに入るクラックって、なかなか「人工的にリアルに再現」するのが難しい、自然の織り成す芸術ですよね。ぶつけた角のスパイダーウェブは、特に魅力的です。
テレビに映える「TVカラー」
VMこうしてみると、ポラリスホワイトの塗装は随分と分厚いですね。
FVこの頃の良質なマホガニーは、色が赤茶色で濃い。薄いホワイトの塗装膜では、木地の色が透けてしまうからだろうね。
VM聞いたんですけど、この「ポラリスホワイト」は「TVカラー」って呼びますよね。当時の白黒テレビ放送でも、画面で目立つようにって事だったんですか?
FVそれ、都市伝説的にホントらしいよ。でも、TV映りを考慮したカラーリングは、TVホワイトではなくて、TVイエローだろ?
VMギブソンの出荷統計を見ていると、60年代に「TV Model」があるのは、Les Paul Jr.とSG Jr.です。SpecialやStandardにTVイエローは無かったってことでしょうか。
FVでも、実際には、TVイエローのSpecialはあるよね。
VMいちど、カラーものも体系的に整理してほしいです。
FV『Little Guitars』が秀逸だから、よく読んで勉強してくれ。
削り出しのブッシュとクールなカラーリングのサーキット
VMせっかくだから、もっとクローズアップしてくださいよ。
FVじゃあ、まずブッシュね。じつは、ペグが廉価な3連クルーソンなのに、ブッシュはハトメじゃなくて、スタンダード譲りの削り出し。耐久性で優っている。
VMハトメのブッシュって、弦交換のときに、いつの間にかどっかにいっちゃうことありません?
FV昔はよく失くしたよ。その上、「ブラス」「ニッケルメッキ」「クロームメッキ」それぞれ、形状違いも含めると8種類あるからやっかいなんだよね。
VMで、失くしたらどうすればいいんでしょう。
FV失くしたの?
VM……はい。先週、楽屋で弦交換の時に。
FVパーツボックスから好きなの持っていって良いよ。いろいろあるから、よくチェックしてね。
VMあざっす。
FVしかし、ポラリスホワイトっていうか、ブロンドっていうか、ホワイトって、並ぶと殊更かっこいいよな。
VMFBとFVとEXのホワイト三本立てってのはどうですか?
FVいいねえ、カッコいいと思うよ。
VM撮影のついでに、クローズアップもお願いしますよ。
FVせっかくだから、キャビティの中も見てみようか。
VMどひゃー、バージンっすね。イエローチューブが何ともいえない60年代の雰囲気を醸し出していて、ホワイトに映えるなあ。
FVそうだね、このキャビティのカラーコンビネーションは、最高にクールだと思うよ。
VMキャビティカバーのブラックは、いまの「真っ黒・漆黒」じゃなくて、ちょっと「濁ったような黒」で、最近のヒスコレとかで再現しにくいパーツなのがわかりますね。
FVピックガードとかキャビティカバーは、似せようとしても、なかなか難易度が高いから、とにかく「割らない・失くさない・改造しない」の「3ない運動」を徹底するようにしないと。
VMですね。ここんとこが欠けちゃうのは仕方ないんですかね。
VMトグルスイッチのワッシャーは、50年代と同じ、ローレットが広いタイプでした。
VMとにかく、60年代のSG Specialを探すと、ホワイトは10本に1本ぐらいしか存在しないわけで、貴重なうえに塗装膜が厚くてクラックから剥げ落ちるため、コンディションの良い個体をコレクションするのも、至難の業ですよ。
FV前編・後編で、TAKEさんのSGを拝見したわけだけど、今回の撮影で一番気に入ったショットはどれだい?
VM迷わず、これです。
FV渋いねえ。じゃあ、私はこれ。
VM僕の勝ちですね(笑)
追記
2本並ぶと、戦闘機の編隊飛行よろしく、いまにも離陸しそうなSGシリーズ、お楽しみいただけましたでしょうか。
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