フライングVベース - あり合わせの傑作
斬新なデザインで成功したフライングVシェイプがベースとして登場するのは80年代になります。2012年にも こっそりと復刻されたVベースですが、今回は80年代の機種を見ていきます。
目次
59年に登場し67年に復刻されるまで、遠く忘れられていたモダンデザインのフライングVは、71年のメダリオン、80年代のブロックポジションなど数々の変遷を経て、いまなお最前線で活躍するデザインです。一方で、これだけ斬新なデザインで成功したVシェイプですが、ベースとして登場するのは、ずっと後の80年代になります。
そのフライングVベース、実は2012年にこっそりと復刻されていたのですがご存知でしょうか?
同時にリッパーベースも復刻されていて、Vヘッドの復刻ですね。今回はそのフライングVベース元祖、80年代を見てみましょう。
寄せ集めっぽい出で立ちのフライングVベース
このヴィンテージのフライングVベースは81年前後に突然登場して、あきらかに“なんか寄せ集めっぽい”出で立ちのデザインで世間をあっと言わせました。カタログで見た記憶がなく、当時は使っている人もほとんど見ませんでしたね。記事のはじめにも掲載している画像は81年のギターとベースを並べてみたところです。
ベースのヘッドストックを見てみると、ギターのしゃもじヘッドとは似て非なるシェイプなのがわかります。
これは73年から83年まで製造された人気ベース「Ripper」シリーズからの流用(というかRipperのヘッドがVからの流用?)のようです。もしかしたら在庫過多のネックやパーツを使い、人目をひくVシェイプでパーツの消化を図ろうとする、ギブソンのマーケティング部門の安易で浅はかな産物なのかもしれません。
個人的にはサンダーバードにも匹敵する、かっこよくてステージ映えするデザインだと思います。自立するし。
では細部を見ていきましょう。
フライングVベースのネック
ネックは3ピースで、サウンド的にはリッパーベースに似たタイトでジャジーな感じです。
ネックジョイントだけ見ると、すぽっと抜けそうに適当な設計でぎこちないです。
この角度はVっぽくていいですね。
リッパーベースと同じピックアップ
ピックアップはリッパーの3点止めを流用しています。
ここらも安易なところがバレバレです。裏側から見てみるとエポキシで固めてあって、重低音がハウリングしないようライブ向けに考えたんだな…と。
同じ時期に8ポールピースの3点止めもあったのですが、フライングVベースの場合は4ポールピースが採用されました。
ブリッジもフェンスも、まあとにかく余ったパーツで構成されています。
解説しようにも説明どころがなくて、なんで丁寧にバインディングを入れたのか不思議なくらいです。
コントロールもギターと同じレイアウトですから、これでベーシスト大丈夫か?って。
こんな感じなので、使っているミュージシャンをググってみても古今東西画像が出てきません。今でこそイエモンのHEESEYさんにぜひ使っていただきたい、レトロなギブソン・ベースです。
余談ですが、ブリッジの裏に前オーナーのソーシャル・セキュリティーナンバーが刻まれていました。昔は盗難防止にヘッドの裏とかいろんなところに、電話番号やらなんやら書いてありましたね。突然日本から連絡したらびっくりするだろうなあ。
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