Les Paul 55/78って何? (前編)
ビビッドでレスポンスが良いシングルコイル・ピックアップの「SSC-1」はツアーにもスタジオにも使える往年のギブソン・サウンド。オールマイティに使いまわせる「単なるヴィンテージ復刻ではない、70年代のレスポール55」ともいえるLes Paul 55/78(77)を前後編の2回に分けてご紹介します。
目次
単なるヴィンテージ復刻ではない、70年代のレスポール55
今回は70年代のお話です。皆さんは中学生でしたか? 高校生でしたか? もしかしたら、体育館の裏でタバコ吸ってて、生活指導の先生に見つかった想い出とか…。
わが校は、構内での喫煙が見つかると柔道部顧問の水谷先生にシメアゲられて、丸坊主が待っているので、ロングヘアーのハードロッカーとしては命がけでした。蚊にも喰われるし。そんな17歳の夏に、ギブソンが復刻したシングルコイル・ピックアップのレスポールが、これです。
弦を張っていないのは、「あるパーツをずっと探して、待っていた」からなのですが、それについては後編でご紹介させていただくとして、まずは「このギターは、なんというモデル名か?」です。正確にご存知でしょうか。私は、「Les Paul 55」とか、「Les Paul 55/77」という名称でカタログに載っていた記憶があります。もちろん、そう信じていました。
発売最初は、コンビネーション・ブリッジ搭載で、まさに55年前後のLes Paul Specialを復刻したモデルだったので、むちゃくちゃカッコよかったです。その後は、改良というか変更というか、ルックス的にヴィンテージから離れていく印象がある「ナッシュビル・チューン・オー・マチック」に進化しています。
Schaller製のクロームブリッジには「Made in Germany」の刻印があり、近年のリイシューとは簡単に区別できますね。Germanyの文字は、マニアにはたまりません。
でも、今振り返ってみると、オクターブ・チューニングも合うし、Germanyのブリッジはポストとの間に遊びが少なくてサウンドもタイト。そして、シングルピックアップの「SSC-1」(P-90という表記はなされていません)は、ビビッドでレスポンスがよく、ツアーにもスタジオにも使える、往年のギブソン・サウンドをしっかりと発揮してくれるので、オールマイティに使いまわせる、しっかりとした「単なるヴィンテージ復刻ではない、70年代のレスポール55」という企業努力が見て取れます。
モデル名は 77? 78?
カタログで見てみましょう。モデル名は「Les Paul 55/78」となっていました。「77」ではなく「78」です。
何度見直しても「78」になっていて、自分自身びっくりしています。もしかしたら、77年製の個体は「55/77」で、78年シリアルのモデルは「55/78」だったのかもしれません。
ヘッドのデカールは「Les Paul Special」ではなく、「Les Paul MODEL」となっていますし、白蝶貝のロゴは、クローズド・オーの角ばった後期と丸い前期が混在しています。
シリアルナンバー部分に、ウォータースライドデカールで機種名が明記されていました。
ギブソンのヘッドストック・ロゴ用ウォータースライド・デカール
2017.4.7
「ほら、やっぱり55/77じゃん」と思いますよね。カタログが間違っているだけなのかもしれません。では、「55/78デカール」があるのか?という問題ですが、いまだかつて見たことはないです。
奥深い70年代のギブソン・ギター
詳細スペックとパーツを見ていきましょう。ジュニアとスペシャルをクラス分けするネックのバインディングは、丁寧にフレットエッジの処理が施されています。何度見ても美しい作業ですね。ギブソンはリフレットの時には「オーバーバインディングにならないよう」丁寧な配慮が必要です。
ナットは接着剤が足りなかったのか、ポロリと取れてしまいました。この時代によくあることなので、弦交換のときに失くさないようにしましょう。
接着不足については、ネックが抜けるというやらかし事件もありました。
SG解体新書 - とんでもない品質の“やっちゃったギブソン”
2017.12.29
トグルスイッチプレートは、表から見ると「R」が垂れているので60年代っぽいですが、裏側に成型マークが入っている70年代バージョンでした。
「RHYTHM/TREBLE」の文字は、本来「ゴールドのホットスタンプ」(下の画像右)のはずですが、このモデルは白文字(画像左)です。このパーツも、紛失すると入手するのはなかなか困難です。
裏返すと、どちらが60年代か一目瞭然ですね。
じっくり見ると、まだまだ奥深い70年代のギブソン。何気なく見過ごしがちなスペックですが、近年高騰するヴィンテージギター・マーケットにあって、その価値が正当に評価されるに伴い、オリジナル性が重視され、こだわりのオーナーに愛されていくのだと思います。
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